アスパラガス
Illustration Asparagus officinalis0b.jpg
アスパラガス
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: キジカクシ科 Asparagaceae
: クサスギカズラ属 Asparagus
学名
Asparagus L.1753

アスパラガス(竜髭菜、Asparagus spp.)とは、被子植物の中の単子葉植物に属する多年生草本植物である。クロンキスト体系ではユリ科に含めているが、分子系統学によるAPG植物分類体系ではキジカクシ科に属している。雌雄異株である。

のように見えるものは実際は極端にほそく細かく分枝したであり、本来の葉は鱗片状に退化している。


名称

名の由来は、原産地のギリシアの古名でアスパラゴス(甚だしく裂けるの意)とよばれ、植物学上の枝で葉のように見える部分が細かく裂けているようにみえることから名付けられている[1]

アスパラガスという和名はキジカクシ属植物の複数種の総称で、中でも最もよくこの名で呼ばれるのは、栽培作物のアスパラガスA. officinalis)である。和名はオランダキジカクシ(阿蘭陀(和蘭)雉隠、学名:Asparagus officinalis[2])といい、成長すると細かく切れた葉に見える枝がキジが隠れることができるほど生い茂ることに由来する。別名ではオランダウド(阿蘭陀(和蘭)独活)、マツバウド(松葉独活)[1]ともいう。漢名を石刁柏(せきちょうはく)というが、石勺柏や石刀柏と表記するのは誤りである。また、アスパラと略称される。

太陽の光を遮って作った白色のもの(左:ホワイトアスパラガス)と、日に当てて緑色にしたもの(右:グリーンアスパラガス)がある。

江戸時代にオランダ船から鑑賞用として日本にもたらされたが、食用として導入されたのは明治のことである。本格的な栽培が始まったのは大正からで、欧米への輸出用缶詰に使うホワイトアスパラガスが始まりであった。その後国内でも消費されるようになり、昭和40年代以降はグリーンアスパラガスが主流となった。現在では生のホワイトアスパラガスや調理しやすいミニアスパラガスなどが店頭に並んでいる。

特徴

原産は地中海東部。イギリスを含むヨーロッパの原産ともいわれ、日本では明治時代初期から栽培されている[1]

多年草で、雌雄異株[1]。草丈は約1.5メートルになり、5 - 7月ころに黄白色の小さなを咲かせる[1]

日本中国朝鮮には自生種のキジカクシA. schoberioides)、クサスギカズラA. cochinchinensis)などが分布する。キジカクシの茎は食用になり、クサスギカズラの根茎(天門冬)は薬用になる。

アスパラガス属の中にはオオミドリボウキ A. plumosusクサナギカズラ A. asparagoidesA. myriocladusなど観葉植物にされるものがいくつかある。

なお、ヨーロッパで広く食用となっている「ワイルド・アスパラガス」("Wild asparagus")はユリ科のOrnithogalum pyrenaicumの花芽であり、オオアマナ属(オーニソガラム)に属する。日本では「アスパラソバージュ」の名で知られる[3]

品種(栽培品種)

以下、アスパラガスの代表的な品種について記す。

標準品種[4]

  • メリーワシントン500W

オランダ育成品種[5]

  • ガインリム
  • ヴェンリム

アメリカ育成品種[6]

  • ウェルカム
  • バイトル
  • グリーンタワー
  • シャワー

日本における栽培

日本で最初に栽培・生産を行ったのは北海道岩内町の農学博士であった下田喜久三である。 本州中部では4月下旬頃から6月にかけて若芽が成長し、低温期は1日1回、高温期は1日2回収穫する。長さが25cmくらいに伸びた柔らかいを食用とする。土寄せして軟白栽培した白いものをホワイトアスパラガス(白アスパラ)といい、それに対して土寄せせずに普通に育てた緑色のものはグリーンアスパラガスという。ホワイトアスパラガスの栽培では日光を遮断するために土を被せてアスパラガスを覆ってしまう方法のほか、鉄道などの廃トンネルを利用した栽培も行われている。いずれも家庭菜園でも容易に栽培可能である。

近年、アントシアニン色素の多い紫色品種のアスパラガス米国原産「パープルパッション」、福島県産「はるむらさきエフ」など)や桜色の品種も登場した。加熱すると紫色は失われ緑色になるため、色を楽しむためには生食するか、食酢レモン汁を入れてさっと湯通しする程度にとどめることが必要となる[7]

雌雄異株であり雄株のほうが勢いが強く収穫量も多いが、1年生株の促成栽培では雌株の方が茎径が太く、成育が旺盛である[8]。しかし外見では見分けられないので、花が咲くまで待つ必要がある。翌年の良質な芽の発生のためには、収穫しすぎない事と、夏に茎が倒れずに充分に繁茂している必要がある。

繁殖は実生による。4月から5月にかけてが蒔き時で、収穫できる株に成長するまでに2年から3年かかる。春になると園芸店などに、その年から収穫できる苗が出回る。

アレロパシー作用があり、連作障害が起きる[9][10]

主要産地は北海道佐賀県長野県[11]。このほか日本各地で露地栽培またはハウス栽培される。

出荷時期と産地の例

耐用年数

2008年度税制改正において法人税等の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が改正され、別表第四「生物の耐用年数表」によれば2008年4月1日以後開始する事業年度にかかるアスパラガスの法定耐用年数は11年となった。

調理と保存

バターとレモンとアスパラガス

野菜としての旬は、春から初夏にかけて、特に5 - 6月ごろである[12]。年間を通してマーケットで売られているが、旬の時期は甘味が増す[13]。畑から取り立てのアスパラガスは特に軟らかく、かるく湯通ししただけで食べられる[13]

ドイツ語圏ではアスパラガスをSpargel(シュパーゲル)と呼び、日本でののように、から初夏にかけての味覚として珍重されている。ドイツ国内産の収穫時期は、始まりはその年の天候によって変動し、おおむね4月頃であるのに対して、終わりは毎年一律に6月24日(聖ヨハネの日)までとなっている。外国産についてはこのルールに制約されないため、国内産シーズンの前後にも入手できる。一般的な食べ方は、茹でた白アスパラガスに溶かしバターオランデーズソースをかける。ハムやジャガイモを付け合わせにしたり、逆に肉料理の付け合せにする場合もある[14][要検証]

調理法として茹でる炒める焼くの方法があり、茹でたあと冷ましてサラダにすることもできる。また基本的に皮が固いことが多いので、ゆでる前に皮をむく必要がある。ゆでる際はむいた皮を一緒にゆでると風味が良くなるといわれている。日本では洋風料理の食材のイメージが強いが、ごま和えやからし和え、酢味噌和えなどの和え物天ぷらなどの和風料理にも広く使われる[15]。アスパラガスの加工品として水煮瓶詰缶詰ピクルスなども市販されている。

アスパラガスを食べたあとの尿に強い臭いを感じる人もいるが、これはアスパラガスに含まれる代謝物質によるもので害はない。アスパラガスが消化・代謝されるとメタンチオールとS-メチルチオエステルが発生する。尿に強い臭いを感じない人の割合は、男性で58%、女性で61.5%を占めた。この嗅覚の差異は遺伝子に基づく嗅覚受容体の差異によるものとされている[16]

冷蔵庫では濡れた新聞紙等で包んで乾燥を防止したうえで立てて保存すると、鮮度と味を維持できる。コップなどで水を吸わせる際は水中にニンニクなどを入れると切り口の腐敗を防げる。アスパラガスを生のまま長時間おくと、繊維が変化して硬くなり苦味も増してしまうため、さっと茹でてから保存すると良い[13]

栄養価

アスパラガス(生)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 85 kJ (20 kcal)
3.88 g
糖類 1.88 g
食物繊維 2.1 g
0.12 g
飽和脂肪酸 0.04 g
一価不飽和 0 g
多価不飽和 0.05 g
2.2 g
トリプトファン 0.027 g
トレオニン 0.084 g
イソロイシン 0.075 g
ロイシン 0.128 g
リシン 0.104 g
メチオニン 0.031 g
シスチン 0.031 g
フェニルアラニン 0.075 g
チロシン 0.052 g
バリン 0.115 g
アルギニン 0.091 g
ヒスチジン 0.049 g
アラニン 0.115 g
アスパラギン酸 0.508 g
グルタミン酸 0.233 g
グリシン 0.093 g
プロリン 0.071 g
セリン 0.106 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(5%)
38 µg
(4%)
449 µg
710 µg
チアミン (B1)
(12%)
0.143 mg
リボフラビン (B2)
(12%)
0.141 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
0.978 mg
パントテン酸 (B5)
(5%)
0.274 mg
ビタミンB6
(7%)
0.091 mg
葉酸 (B9)
(13%)
52 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(3%)
16 mg
ビタミンC
(7%)
5.6 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(8%)
1.13 mg
ビタミンK
(40%)
41.6 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
2 mg
カリウム
(4%)
202 mg
カルシウム
(2%)
24 mg
マグネシウム
(4%)
14 mg
リン
(7%)
52 mg
鉄分
(16%)
2.14 mg
亜鉛
(6%)
0.54 mg
マンガン
(8%)
0.158 mg
セレン
(3%)
2.3 µg
他の成分
水分 93.22 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

学名の"officinalis"は「薬用の」という意味で、古くから利尿作用や健胃作用が知られていた[17]オリゴ糖カロテンビタミンB1ビタミンB2ビタミンCビタミンEカルシウムカリウム食物繊維や、葉酸アスパラギンルチンなどを含み、栄養価ではホワイトアスパラガスよりもグリーンアスパラガスの方が勝る[12]。アスパラギン酸はアスパラガスから発見されたことにちなんで命名された。グリーンアスパラガスに含まれるオリゴ糖には、腸内善玉菌であるビフィズス菌を効率よく増やす働きがあり、腸内年齢を若く保つ効果があるといわれている[12]。アスパラギンは吸収されるとヒトの体内でアスパラギン酸に変化し、新陳代謝を高める働きがあるとされる[13]。アスパラガスの穂先にはルチンが含まれ、アスパラギン酸とともに、血圧を安定させて動脈硬化を予防効果が期待されている[13]

ヨーロッパでは、アスパラギンやマンナンコリンアルギニンが含まれるとされ、肝臓心臓の疾患に薬用されている[18]中国では、塊根にアスパラギンやステロイドサポニンクマリンカロテン精油などを含んでいるとされ、サポニンは一般に去痰作用、溶血作用が知られており、去痰薬や強心薬などに使われている[18]。日本では、アスパラガスを薬用にしていない[18]。グリーンアスパラガスにもアスパラギンが含まれ、体細胞の増殖に役立つといわれている[18]

薬用

薬効としては根や茎に利尿作用がある[12]。フランスの薬草療法家モーリス・メッセゲは、「この植物の主要な効能は利尿作用である」と述べ、尿道炎を起こしている人を除く腎臓機能の低下、膀胱・肝臓・心臓の病気、痛風にかかっている人に対して、特におすすめする旨を自身の著書に記している[18]。このときの用い方は、1リットルの湯に、根茎を半握りからひと握り分ほど入れて、しばらくの間、煮出してから1日にティーカップ2杯飲むとしている[18]

中国では、2 - 3月ごろに塊根を掘り上げて水洗いしてそのまま日干しにするか、熱湯に通してから日干ししたものを、石刁柏(せきちょうはく)と呼んで薬用にしている[18]がある風邪のときや、小児の回虫などの寄生虫による栄養不足に、石刁柏を1日量3 - 9グラムほど煎じて服用する[18]

ギャラリー

雑学

カーボベルデ北部、バルラヴェント諸島東部を構成しているサル島には、アスパラガスを意味する名称を持つ都市「エスパルゴス」が存在する。

アスパラガスを食べた後の尿は、アスパラガス酸(asparagusic acid)の影響で腐ったタマゴのような臭気を感じるケースがあるが、これを臭いと感じるか感じないかは個人差がある[19]

脚注

  1. ^ a b c d e 田中孝治 1995, p. 168.
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Asparagus officinalis L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月13日閲覧。
  3. ^ フランスから輸入される高級食材、アスパラソバージュについて教えて下さい。 Archived 2015年5月22日, at the Wayback Machine. 農林水産省、2015年1月23日閲覧。
  4. ^ グリーンアスパラガスの品種特性”. www.hro.or.jp. 2020年5月19日閲覧。
  5. ^ 研究成果情報 北海道農業:グリーンアスパラガス露地栽培の品種特性および多収維持管理法”. www.naro.affrc.go.jp. 2020年5月19日閲覧。
  6. ^ 研究成果情報 北海道農業:グリーンアスパラガス露地栽培の品種特性および多収維持管理法”. www.naro.affrc.go.jp. 2020年5月19日閲覧。
  7. ^ 【食 旬な産地】福島県南会津町/紫アスパラガス 生で甘く/緑、白、桜 食べ比べ『読売新聞』朝刊2018年6月20日(くらし面)
  8. ^ 小泉丈晴、剣持伊佐男、町田安雄「アスパラガス1年生株の生育と促成栽培での収量・品質の雌雄間差(栽培管理・作型)」『園芸学研究』第2巻第4号、園芸学会、2003年12月15日、 275-278頁、 NAID 110001803344
  9. ^ 元木悟、西原英治、北澤裕明、平舘俊太郎、篠原温「沖積土壌におけるアスパラガスの連作障害に対するアレロパシーの関与(栽培管理・作型)」『園芸学研究』第5巻第4号、園芸学会、2006年12月15日、 431-436頁、 NAID 110005716737
  10. ^ 元木悟、西原英治、平舘俊太郎、藤井義晴、篠原温「アスパラガスのアレロパシーに関する研究 : (第10報)アスパラガス連作障害における活性炭を利用したアレロパシー回避技術の確立」『園芸学会雑誌. 別冊, 園芸学会大会研究発表』第75巻第2号、2006年9月23日、 NAID 10019588261
  11. ^ 平成24年度収穫量ランキング
  12. ^ a b c d 小池すみこ 1998, p. 18.
  13. ^ a b c d e 小池すみこ 1998, p. 19.
  14. ^ カルカ 麻美「春の味覚シュパーゲル(白アスパラガス)All About、2006年04月19日。 2015年6月19日閲覧。
  15. ^ 小池すみこ 1998, p. 20.
  16. ^ S.マースキー、「アスパラガス尿と私」、『日経サイエンス』2017年第5号、95P、日本経済新聞出版社、ISSN 0917-009X
  17. ^ マグロンヌ・トゥーサン=サマ、玉村豊男訳 『世界食物百科』 原書房、1998年。ISBN 4562030534 p.730
  18. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995, p. 169.
  19. ^ 桑満おさむ医師おしっこのニオイが気になる方へ、それって「アスパラガス」が原因かも。 (五本木クリニック)

参考文献