クリスマス: Christmas)は「キリストのミサ」という意味で、一部の教派が行うイエス・キリストの降誕祭[1]。あくまで誕生を祝う日であって、イエス・キリストの誕生日ではない[2]

毎年12月25日に祝われるが、正教会のうちユリウス暦を使用するものは、グレゴリオ暦1月7日に該当する日にクリスマスを祝う[3][4]。ただし、キリスト教で最も重要な祭と位置づけられるのはクリスマスではなく、復活祭である[5][6][7][8]

キリスト教に先立つユダヤ教の暦、ローマ帝国の暦、およびこれらを引き継いだ教会暦では, 現代の常用時とは異なり、日没を一日の境目としているので、クリスマス・イヴと呼ばれる12月24日夕刻から12月25日朝までも、教会暦上はクリスマスと同じ日に数えられる[9]。したがって、教会暦ではクリスマスは「12月24日の日没から12月25日の日没まで」である。

キリスト教国(en:christendom)以外でも、年中行事としても楽しまれ、ジングルベルなどのクリスマスソングは多くの人に親しまれている。

概要

教会暦における降誕祭の日付の概要。教会暦の一日は日没から始まり日没に終わる。12月24日の日没からクリスマスが始まり、12月25日の日没にて終わる。従って24日の昼間は「クリスマスイヴ」ではなく、24日の日没以降がクリスマスイヴである。

新約聖書には、イエス・キリスト誕生日を特定する記述は無い。

イエスがヘロデ王の代に、ユダヤベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちはの方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。 — マタイによる福音書第2章第1・2節(口語訳聖書
恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。きょうダビデの町に、あなたがたのために救世主がお生まれになった。このかたこそ、主なるイエス・キリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである。 — ルカによる福音書第2章第10~13節(口語訳聖書)

一部の教派ではクリスマスは「降誕[注釈 1]を記念する祭日」と位置づけられているものの、「イエス・キリストの誕生日」と考えられているわけでは無い。イエス・キリストが降誕した日がいつにあたるのかについては、古代からキリスト教内でも様々な説があった(例えば3世紀の初め頃には、アレクサンドリアのクレメンス5月20日と推測していた)[2]

キリスト教圏では、クリスマスには主に家族と過ごし、クリスマスツリー常緑樹で、一般にモミの木)の下にプレゼントを置く。プレゼントを贈る気持ちである「」の日でもある。

正教会では、正式なフルネームとしては「主神我が救世主イイススハリストスの降誕祭」として祝われる(イイスス・ハリストスはイエス・キリストのギリシャ語読み)[要出典]エルサレム総主教庁ロシア正教会グルジア正教会と、非カルケドン派教会であるコプト正教会ユリウス暦の12月25日(21世紀現在、グレゴリウス暦1月7日にあたる)に降誕祭を祝うが、ギリシャ正教会、ブルガリア正教会などでは修正ユリウス暦の12月25日(21世紀現在、グレゴリウス暦の同日にあたる)に執り行う[要出典]。正教会では、降誕祭と神現祭(主の洗礼祭:降誕祭の12日後)とは奉神礼として一連のものであり、構造は同じである[要出典]。降誕祭の祭前期には「聖列祖の主日」で原祖アダム以来のキリストの肉に縁る先祖を、「聖世祖の主日」では神の祖父母イオアキムアンナら歴代の義者を祭る[要出典]

起源

古代ローマの宗教のひとつミトラ教では12月25日は「不滅の太陽が生まれる日」とされ、太陽神ミトラを祝う冬至の祭があったが、これを転用したものではないかと言われている。12月25日の生誕祭は、遅くとも354年には始まった。それ以前にはギリシアやロシアで1月6日説が採用されており[10]、降誕祭とは別に、西方教会では1月6日にキリストの公現を祝う(公現祭)。

サンタクロースは、キリスト教の聖人である奇蹟者聖ニコライ(ニコラウス)の伝説が起源とされる。

クリスマスツリーの習慣は、中世ドイツ神秘劇アダムとイヴ物語を演じた際に使用された樹木に由来している[11]。またクリスマスツリーに飾りつけやイルミネーションを施す風習は19世紀以降のアメリカ合衆国で始まったものである[11]

名称

各国語と語源

日本語での当祭の呼び方には、英語Christmas に由来する「クリスマス」の他に、「降誕祭」、「聖誕祭」、「聖夜」などがある。

英語の Christmas は、「キリストChrist:クライスト)のミサmass:マス)」に由来する。これは、古英語Crīstes mæsse(初出 1038年)が、中英語において Cristemasse となり、現在につながる[12][13]

ヨーロッパ各国語では、「キリストの誕生」あるいは、 "キリストの" にあたる部分を省略した「誕生」を指す言葉(転訛含む)で当祭を指す例がよく見られる。以下の表において「誕生」は、日本語におけるキリスト教用語の「降誕」と書き表す。

「クリスマス」にあたるヨーロッパ各国語
言語 表記 由来 発音
国際音声記号 音声ファイル 片仮名表記
希語 Χριστούγεννα キリストの降誕 [xɾisˈtuʝɛna] フリストゥーイエナ
羅語 Christī Nātālis クリスティー・ナーターリス
伊語 Natale 降誕 [naˈtaːle] It-Natale.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ーレ
仏語 Noël [nɔɛl] ノエル
西語 Navidad [naβiˈða(ð)] Es-Navidad.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ナビ
[naβiˈðaθ][注釈 2] (ナビース[注釈 2]
欧葡語 Natal [nɐˈtaɫ] (ー)
伯葡語 [naˈtaw] (ー)ウ
露語 Рождество [rəʐdʲɪstˈvo] Ru-рождество.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ラァジディストヴォ
波語 Boże Narodzenie 神の降誕 [ˈbɔʐɛ ˌn̪arɔˈd͡zɛ̃ɲɛ] Pl-Boże Narodzenie.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ージェ・ナローニャ
英語 Christmas キリストのミサ [ˈkrɪsməs] en-us-Christmas.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] スマス
蘭語 Kerstmis [ˈkɛrs(t)məs] nl-kerstmis.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ルストゥミス
独語 Weihnachten 聖夜 [ˈvaɪˌnaxtən] De-Weihnachten.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ヴァイナハテン
丁語 Jul 冬至祭
ユール
[juːl] ール
諾語 Jul [jʉːl] No-jul.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ール
典語 Jul [jʉːl] Sv-jul.ogg 音声[ヘルプ/ファイル] ール
芬語 Joulu [jou̯lu] ウル

略記

英語 "Christmas" を略記する際には、ギリシア語 Χριστος(Christos)の頭文字である「Χ」(ケー、キー、カイ)、または、それと形が同じラテン文字X」(:イクス、:エ(ッ)クス)を "Christ" の省略形として用いている。

そのような例は、中英語では「Χρ̄es masse」が見られる[13]。また、現代の英語圏では「Xmas」や「X-mas」が頻繁に見られる(これらはスタイルガイドでは推奨されていないとされる[14])。

他に、アポストロフィを付けた「X'mas[15]Christ の末字 "t" を添えたXtmas[16]や「Xtmas」、Χριστος の頭二文字をラテン文字に置き換えた「Xpmas」などもある。

日本ではアポストロフィを用いた「X'mas」「X'Mas」の表記が和製英語とする説[17]や、アポストロフィを付するのは誤りとする説、現在はアジア圏でのみ使用とする説などがある。Engrishの代表との誤解もある[18][19]。しかし、歴史的に和製英語でないことは、19世紀の書籍でも確認できる[20]。現在の英語圏でも出版物などで一般的に使用されており[21][22]Twitterにおいても米国のラジオ局が発信したツイートや、英米の著名人・一般人のツイートにも見られる(2012年現在)。

ロシア語での略記は、"Рождество Христово"(ハリストスの降誕) の頭文字からとった「РХ」で表される。ロシアでは、聖堂などに「РХ」とネオンサインで表示する様子がしばしば見られる。ロシア正教では「ハリストス生まる! 崇め褒めよ!」がクリスマスの挨拶である。

世界のクリスマス

フランスでは多くの教会堂内武または外部に「降誕場面」が飾られる。

キリスト教の中でもカトリックの影響の強いイタリアポーランドフランススペインなどでは、クリスマスは12月25日に始まり、1月6日公現祭(エピファニア)に終わる。クリスマスの飾り付けは23日頃に行う。24日はクリスマス・イヴとして夜を祝う。

フランスの多くの教会堂の内部あるいは外部で「降誕場面」(フランス語で「クレーシュCrèche、キリスト生誕時の情景を表した模型)が飾られ、それを見て人々はその出来事に想いを馳せる。大人たちは、12月初旬からクリスマスにかけて、愛情を込めた言葉を記したクリスマスカードを郵送しあう。子供達がプレゼントを貰うのは1月6日である。

イタリアのほとんどの地域ではプレゼントを持って来るのは、魔女ベファーナとされる。これらの国々でのクリスマス期間は12月24日から公現祭までで、飾り付けは1月6日を過ぎてから取り払われる。

オランダドイツの一部地域などでは、12月6日がニコラウスの日で、子供達はプレゼントをもらう。ドイツでプレゼントを持ってくるのは北部ではヴァイナハツマン(Weihnachtsmann、「降誕祭の男」)、南部ではクリスト・キントChristkind、「キリストの子」)と呼ばれている。プレゼントを貰えるのは、それまでの1年間に良い子だった子供だけで、悪い子は石炭を与えられたり、木の枝で打たれることになっている地域もある。

北欧のクリスマスはユールと呼ばれ、聖ルチア祭から始まる。古代ゲルマン冬至祭の影響を色濃く残しており、ユール・ゴート(ユールブック)と呼ばれる、ワラで作ったヤギを飾ること、妖精がプレゼントを持って来てくれることなど、独自の習慣が見られる。また、クリスマスの時期は真冬であるため、小鳥たちがついばめるように、ユールネックというの穂束を立てる習慣もある[23]

イギリスやアメリカのクリスマスではサンタクロースが強調されるが、この原型はシンタクラースまたはミラのニコラオスだと考えられている

アメリカ合衆国では、イギリス流のクリスマスが一般的で、日本のクリスマスもイギリス流を受け継いでいる。この日の前に、クリスマスの挨拶にとクリスマスにちなんだ絵はがきカードグリーティングカード)を送る習慣がある。

イギリスやアメリカでは、クリスマスは基本的に自宅で家族と過ごすものであり、クリスマスのずいぶん前から一緒にリースクリスマスツリーを作ったり、家を飾り付けるなどの協同作業をすることで家族で一緒に過ごす喜びを確認し、クリスマスの当日には家庭料理を味わうのが一般的であり、あえて外出するのはクリスマスミサに参加するため、教会に行くくらいである。

イギリスではサンタクロース(Father Christmas)が12月25日にプレゼントを持って来る。アメリカ合衆国では、プレゼントを家族全員で交換し合う習慣がある。クリスマスの日には台所周辺にヤドリギが飾られる。19世紀のイギリスを中心に、ヤドリギの下に偶然女性が立った場合、その女性にキスをしてもよいとする習慣があった[24]

ソビエト連邦時代のロシアでは、クリスマスは伝統的な祭りとして禁止こそされなかったものの政府側は良い顔を見せず、キリスト教的な考えを壊そうとする、ソビエト共産党の意向沿ったものにするなど政治色の強いものとなっていた。特にヨシフ・スターリンの時代では、クリスマスがスターリンの誕生日の四日前ということもあり、クリスマスツリーにスターリンの写真をつるすといったことも行われた。子供は、サンタクロースに手紙を書く代わりにクレムリンに平和への感謝を記した手紙を書くように強いられた[25]

1990年代からアメリカ合衆国では、宗教的中立の観点から[注釈 3]、またユダヤ教の祭日ハヌカーがほぼ同じ時期であることもあり、クリスマスを祝わない立場の人に対して「メリー・クリスマス」の代わりに「ハッピー・ホリデーズ(Happy Holidays)」(「楽しい休日・祝日を」)の挨拶を用いる場合がある(ポリティカル・コレクトネスを参照)。

1990年代後半から、政教分離の原則のもと、公共の空間に飾られたクリスマスツリーを「ホリデーツリー」と言い換えるケースが出てきたが、キリスト教右派団体から批判を受けている。また、1960年代からアフリカ系アメリカ人の間で、クリスマスの翌日からアフリカ民族の伝統を祝うクワンザーという行事を家庭で行うことが増えている。

欧米諸国、さらに大韓民国中華人民共和国香港特別行政区、同マカオ特別行政区では、クリスマスは法定祝日である。ヨーロッパでは12月24日(イヴ)から1月1日(元日)までクリスマス休暇が続く(曜日配列の関係で12月22日もしくは12月23日から始まったり、或いは1月2日もしくは1月3日まで続く年もある)。12月25日(24日の終電から26日の始発まで)は、ロンドン地下鉄ロンドンバスは全線運休になる[26]

一方、アメリカでは25日と1月1日だけが祝日で、後は個人で各々有給休暇を取得して休むのが一般的である[27][28]も休暇となり、基地や宿営地は閉鎖され、派兵中でない兵士達は自宅へ帰宅する。

オーストラリア南米など南半球の国々では、クリスマスは真夏となる。そのためクリスマスパーティーは、屋外やプールなどで開催されることも多い。

正教会圏に含まれるロシアでは、クリスマスは「冬祭り」、サンタクロースは「マロース爺さん」(ロシア語で、マロースは「吹雪」の意味)と呼ばれており、スネグーラチカ(雪娘)を連れているとされる。ロシア正教会セルビア正教会など、ユリウス暦を使う正教会の降誕祭(クリスマス)は、1月7日(ユリウス暦で12月25日)である。

宗教弾圧が行われていたソビエト社会主義共和国連邦は、表向き大々的に降誕祭が祝われることは無かったが、ソ連崩壊後の旧ソ連諸国で、降誕祭が大々的に祝われるようになった。

日本のクリスマスの歴史・行事