合成樹脂(ごうせいじゅし、: synthetic resin)とは、人為的に製造された高分子化合物からなる物質の一種。合成樹脂から紡糸された繊維は合成繊維と呼ばれ、合成樹脂は可塑性を持つものが多い。

概説

合成樹脂は一般的には石油を原料とするモノマーを重合してできたポリマーに添加剤を加えた物質の総称である[1]。合成樹脂は、主に原油蒸留して得られるナフサを原料として製造され、この製造は石油化学産業の重要な一部門となっている[2]

他方、他の原料からも製造は可能であり、特に、再生産が可能であるサトウキビトウモロコシなどのバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックバイオプラスチック)は石油資源の枯渇対策の一つとして注目されている[3]。ただし、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは全く別の概念であり、バイオマスプラスチックであるからと言って自然に分解するわけではないことは注意が必要である[4]

金型などによる成形が簡単なため、大量生産される各種日用品や工業分野、医療分野の製品などの原材料となる。製品の使用目的や用途に合わせた特性・性能を有する樹脂の合成が可能であり、現代社会で幅広く用いられている。

一般的なプラスチックの特徴としては、電気を通さない絶縁体である、水に強く腐食しにくい、比較的熱に弱い等が挙げられる。ただし硬度や耐熱性、強度に関しては改善が可能であり、こうした点を強化したエンジニアリング・プラスチック(エンプラ)やスーパーエンプラと言った高性能なプラスチックも使用されている。

また、絶縁性や腐食耐性はプラスチック本来の性質である。しかし、使用目的に応じてこれらの性質に当てはまらないプラスチックも開発されている。

導電性に関しては、1970年代に白川英樹らによって導電性ポリアセチレンが開発されて以降、様々な導電性ポリマーが開発され、タッチパネルなどに利用されるようになった[5]

腐食耐性に関しても、微生物による分解が可能な生分解性プラスチックが開発されているが、分解には特殊な条件や長い期間が必要なものも多い[6]

親水性に関しても、非常に大量の水を吸収し保存することが可能な高吸水性高分子が開発されており、保水剤や紙おむつなど幅広く利用され、その保水性から砂漠の緑化への利用も計画されている[7]

名称

物質の名称で用いる場合の「プラスチック」 (: plastic) という表現[注 1]は、元来「可塑性物質」 (: plasticisers) という意味を持ち、主に金属結晶の分野で用いられた概念を基盤としており、「合成樹脂」同様、日本語ではいささか曖昧となっている。

合成樹脂と同義である場合や、合成樹脂が「プラスチック」と「エラストマー」という2つに分類される場合、また、原料である合成樹脂が成形され硬化した完成品を「プラスチック」と呼ぶ場合、多様な意味に用いられている[8][9]

よって、英語の学術文献を書く場合、「plastic」は厳密性を欠いた全く通用しない用語であることを認識すべきで、「resin」(樹脂、合成樹脂)などと明確に表現するのが一般的である。

合成樹脂の化学

高分子

合成樹脂は高分子化合物の一種である。例えば、ポリエチレンは炭素2個のエチレンを多数繋いだ重合体であり、この場合のエチレンは「モノマー」と呼ばれ、ポリエチレンは「ポリマー」と呼ばれる。「モノ」は1つ、「ポリ」はたくさんを意味する接頭辞である。モノマーを繋げていく反応を重合反応と呼び、モノマーが繋がっている個数を重合度と呼ぶ。エチレン500個が繋がったポリエチレン(炭素数1000)の重合度は500である。重合度が大きくなるにつれ、より硬くより強い樹脂になる。ポリエチレンは熱をかけると融けて流動するので、その状態で成型する。流動し始める温度(融点)は分子量が大きくなるほど高くなる。分子量が一定以上に大きくなると、熱をかけても流動せず、さらに温度を上げると分解する。

共重合とポリマーアロイ

用途によって、2種類以上のモノマーを使用して合成樹脂を作ることがある。これを共重合と呼ぶ。例えば自動車の内装に多用されているABS樹脂は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂の略称で高い強度と耐衝撃性を有する。硬いが衝撃に弱く割れやすいアクリロニトリル樹脂とスチレン樹脂の性能と、柔らかいが衝撃に強いブタジエン樹脂の性能を組み合わせ、強度と耐衝撃性を両立させている。アロイとは日本語で合金と呼ばれるもので、金属の華々しい開発に樹脂開発者が憧れて命名されたといわれている。

共重合はモノマーの配列の仕方によって、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合に分類される。ランダム共重合はモノマーがランダムに結合した物。ブロック共重合は単一モノマーでできたある程度の長さのポリマー同士が縦に繋がっているもの。グラフト共重合は注連縄に似ている。単一モノマーで出来た長いポリマーの所々に違う種類のポリマーがぶら下がっている。

共重合は、2種類以上のモノマーが化学的に結合して出来ているが、ポリマーアロイは異種の単独ポリマー同士を混合して製造する(アロイは合金のこと)。ポリマーアロイの例として耐衝撃性ポリスチレンがある。ポリスチレンは上記のように硬くて割れやすいが、少量のゴムを混合することにより割れにくい性質を持たすことができた。

歴史

1835年塩化ビニルポリ塩化ビニル粉末を発見したのが最初といわれる。初めて商業ベースに乗ったのは、1869年にアメリカで開発されたセルロイドである。これはニトロセルロース樟脳を混ぜて作る熱可塑性樹脂だが、植物のセルロースを原料としているので半合成プラスチックと呼ばれることがある。セルロイドはもともと、アフリカゾウの乱獲による象牙の不足を受けたビリヤード・ボール会社の公募によって商品化されたものであり、ビリヤードボールをはじめフィルムおもちゃなどに大量に使用されたが、非常に燃えやすく、また劣化しやすい性質があるため次第に使用されなくなった[10]

本格的な合成樹脂第一号は、1909年にアメリカのレオ・ベークランドが工業化に成功したベークライト(商品名)といわれている。フェノールホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂で、一般にはフェノール樹脂と呼ばれている[11]。その後、パルプ等のセルロースを原料としてレーヨンが、石炭石灰石からできるカーバイドを原料にポリ塩化ビニルなどが工業化された。戦後、石油化学の発達により、主に石油を原料として多様な合成樹脂が作られるようになる。日本では、1960年代以降、日用品に多く採用されるようになる。

1970年代には工業用部品として使用可能なエンジニアリングプラスチックが開発され、1980年代には更に高度なスーパーエンジニアリングプラスチックが使用されるようになった。これらの合成樹脂は金属に代わる新たな素材として注目されている。

1970年頃までは「プラスチックス」という表記が見られた。これはアメリカでも同様で、"plastics" という「形容詞+s」で集合名詞としていたが、名詞であるという意識が高まり、"s" が抜け落ちた。その時期は日本より約10年早い。(なお、形成外科を plastic surgery というように、形容詞 plastic の原義は「形をつくる」「成型による」「成型可能な」といった意味である)

性質上の分類

高分子材料である合成樹脂は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられる[12]

熱硬化性樹脂

熱硬化性樹脂 (: Thermosetting resin) は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂のこと[13]。網化状樹脂、橋かけ形樹脂、三次元化樹脂ともいう[12]。熱硬化性樹脂には縮合重合形と付加重合形がある[12]

縮合重合形

縮合重合形フェノール樹脂やメラミン樹脂などがある[12]

など

付加重合形

付加重合形にはエポキシ樹脂などがある[12]

など

熱可塑性樹脂

熱可塑性樹脂 (: Thermoplastic resin) は、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のこと。線状樹脂ともいう[12]。一般的に、熱可塑性樹脂は切削・研削等の機械加工がしにくいことが多く、加温し軟化したところで金型に押し込み、冷し固化させて最終製品とする射出成形加工等が広く用いられている。成形法にはほかにも、金型から押し出して成形する押出成形など様々な成形法が存在する[14]熱硬化性樹脂よりも靭性が優れ、成形温度は高いが短時間で成形できるので生産性が優れる。

熱可塑性樹脂には結晶性樹脂と非結晶性樹脂(無定形樹脂)がある[12]

結晶性樹脂

結晶性樹脂にはポリエチレンポリプロピレンなどがある[12]

非結晶性樹脂

非結晶性樹脂にはアクリル樹脂ポリカーボネートなどがある[12]

応用上の分類(熱可塑性樹脂)

熱可塑性樹脂を用途により分類すると、以下のとおりになる。

汎用プラスチック

家庭用品や電気製品の外箱(ハウジング)、雨樋や窓のサッシなどの建築資材、フィルムやクッションなどの梱包資材等、比較的大量に使われる。

など

エンジニアリング・プラスチック

家電製品に使われている歯車軸受け、CDなどの記録媒体等、強度や壊れにくさを特に要求される部分に使用される。略してエンプラとも呼ばれる。

など

スーパーエンジニアリングプラスチック

特殊な目的に使用され、エンプラよりもさらに高い熱変形温度と長期使用出来る特性を持つ。略してスーパーエンプラとも呼ばれる。

など

別途、熱可塑性樹脂を硬度で分類すると、上記の硬度高めの「プラスチック」と硬度低めの(柔らかく、弾力がある)「熱可塑性エラストマー」がある。

合成樹脂の用途

プラスチックが本格的に開発されたのは20世紀に入ってからであるが、その軽さや衝撃への強さ、腐りにくさ、絶縁性の高さ、そして何よりも用途に合わせて安価に大量生産が可能であることから、それまで木材繊維ガラス陶器などを素材に用いていたものがプラスチックに置き換えられることも多く、用途は非常に多岐にわたる[15]

日本における2018年度の生産のうちもっとも利用が多いのはフィルムやシート向けであり、全生産量の43%を占める。この中にはポリ袋などの包装用品や各種農業フィルムが含まれている。次いで利用が多いのはペットボトルポリタンク洗剤シャンプー容器などの容器類であり、生産量の14.8%を占める。第3位は機械の筐体・機構部品、電子機器や小型機械家電製品といった機械器具や部品類であり、全体の11.6%を占める。第4位は各種パイプ継手であり、7.5%を占めている。食器などの台所・食卓用品や、風呂トイレ洗濯掃除用品、文房具楽器など各種日用品は5%を占め第5位となっている。以下、雨樋や床材などの各種建材が4.7%、発泡スチロールなどの発泡プラスチックが4.3%、ドア看板、波板などの板が2%、浴槽ボートの船体、釣り竿などに用いられる強化プラスチックが1.2%、衣服などに用いられる合成皮革が1%、そのほかの用途が4.9%となっている[16]

合成樹脂の性能

機械的性質

機械的性質は引張りや圧力等の外力に対する特性であり、機械部品など広範囲に使用される素材であることから各種の試験がある[17]