モル
mole
記号 mol
国際単位系 (SI)
種類 基本単位
物質量
定義 6.02214076×1023アボガドロ定数) の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量[1]
由来 その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる物質量
語源 ドイツ語 Molekül(分子
テンプレートを表示

モル英語: mole /məʊl/, ドイツ語: Mol, 記号: mol)は国際単位系 (SI) における物質量単位である。SI基本単位の一つである。

名前はドイツ語のMolekül(英語では molecule。ともに 「分子」 の意)に由来する。モルを表す記号 mol はドイツ人化学者ヴィルヘルム・オストヴァルトによって導入された[2]

定義

「モル」の定義は以下である。(第26回国際度量衡総会の決定。2019年5月20日施行)

The mole, symbol mol, is the SI unit of amount of substance. One mole contains exactly6.02214076×1023 elementary entities. This number is the fixed numerical value of the Avogadro constant, NA, when expressed in the unit mol−1 and is called the Avogadro number.

The amount of substance, symbol n, of a system is a measure of the number of specified elementary entities. An elementary entity may be an atom, a molecule, an ion, an electron, any other particle or specified group of particles. [3]

モル(記号は mol)は、物質量のSI単位であり、1モルには、厳密に6.02214076×1023 の要素粒子が含まれる。この数は、アボガドロ定数 NA を単位 mol−1で表したときの数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。

系の物質量(記号は n)は、特定された要素粒子の数の尺度である。要素粒子は、原子、分子、イオン、電子、その他の粒子、あるいは、粒子の集合体のいずれであってもよい[4]

この定義により、モルはキログラムの定義に依存しないものになった。

日本の法令上は、計量法第3条の規定[5]に基づく計量単位令(平成4年政令第357号)が、計量単位令の一部を改正する政令(令和元年5月17日政令第6号)により改正され、2019年5月20日に施行することにより変更された。ただし、計量単位令では、SIでの定義とは異なり、下記のように、簡潔な定義となっている。

6.02214076×1023の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量[6]

旧定義(2019年までの定義)

2019年5月19日までの国際単位系におけるモルの定義は以下の通りであった。

  1. モルは、0.012 キログラム(12グラム)の炭素12の中に存在する原子の数と等しい要素粒子 (elementary entities) を含む系の物質量である。
  2. モルを用いるとき、要素粒子を指定する必要があるが、それは原子、分子イオン電子その他の粒子、またはこれらの粒子の集合体であって良い[7]

1980年国際度量衡委員会(CIPM)により以下の補則が加えられていた。これはモルの定義の一部であった[8]

:補則:この定義の中で、炭素12は結合しておらず、静止しており、基底状態にあるものを基準とすることが想定されている。

現在の炭素原子によるモルの定義を「炭素スケール」とよび、過去の酸素基準と分けて呼ぶこともある。

なお、新定義では、アボガドロ定数を正確に6.02214076×1023とすることによりモルを定義したので、1モルの炭素12の質量は、12グラムではなくなり、11.999 999 9958(36) グラムという実験値となった[9]

アボガドロ定数

モルを定義することで、物質量と要素粒子の数を結ぶ普遍定数が定義され、またその値を決定することができる。そのような普遍定数としてアボガドロ定数がある。 1 モルに含まれる構成要素の数をアボガドロ定数という。アボガドロ定数を表す記号は N A または L が用いられる[10]。 ある試料に含まれる要素粒子 X の物質量 n (X ) は、要素粒子の個数 N (X ) と以下の関係で結ばれる。

物質量 n (X ) の単位は mol であり、個数 N (X )無次元量であるため、アボガドロ定数は mol−1 となる。

歴史

モルは本来は、全ての物質は分子よりできているとの考えの元に、その物質の分子量の数字にグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 モルと定義した。例えば酸素分子の分子量は 32.0 なので、1 mol の酸素分子は 32.0 g となる。物質量という概念は19世紀の近代化学発祥のころから使われているものであり、この単位は当初はグラム原子グラム分子などと呼ばれていた。

しかし、イオン結合金属結合には分子と呼べるものがないことがわかり、共有結合の場合でも単純な分子が存在しないものがあることもわかってきた。そこで、物質を表す化学式で示される元素の原子量の和を化学式量と呼び、それにグラムをつけた質量に含まれる物質量を 1 mol と定義することとした。これにより、1 mol の塩化ナトリウムは 58.5 g、は 55.85 g と表せるようになった。

1 モルに含まれる要素粒子の数は、要素粒子の種類にかかわらず一定(アボガドロ数個 = 6.02214076×1023 個)である[11]。また 1 モルの理想気体は、標準状態 (STP: standard temperature and pressure) では同じ体積(約22.41396954 L(リットル))を占める[12]。このように、モルは化学の分野では基本となる重要な単位である。

1913年頃から、原子の中には質量数の異なる数種の原子(同位体)があることがわかってきた。長年、モルの定義には酸素分子を使用し、酸素分子 32 g を 1 mol としてきたが、酸素原子には天然のものでも質量数 16 のほか 17, 18 のものがあることがわかった。すなわち、それまでは質量数 16, 17, 18 の酸素原子が混ざった状態のものでモルを定義していたことになる。それがわかってから、物理学の分野では質量数 16 の酸素だけを分離して(完全に分離するのは困難なので、分離できたと仮想して)、質量数 16 の酸素による酸素分子 32 g の物質量を 1 mol と再定義した。しかし、化学者たちはそれまで通りのモルの定義を使い続けた。

物理学と化学とで異なるモルを使い続けるのは不都合があるため、1960年国際純粋・応用物理学連合 (IUPAP) と国際純正・応用化学連合 (IUPAC) が協議して、共通的に炭素12に原子量 12 の値を与えることとした。ここから、1 mol は 12 g の炭素12の物質量という旧定義が導き出せる。炭素12が選ばれたのは、これが天然の炭素の大部分を占めているためである。

モルをSI基本単位とすることおよびその定義は、1971年国際度量衡総会 (CGPM) で採択された[13]

批判

1971年にモルが国際単位系に採用されて以来、モルをメートルと同等の単位として扱うことに対する多くの批判が生じている。