上水道(じょうすいどう)とは、一般に飲用可能なの公共的な供給設備一般を指す。上水道には単に「水道」という呼び方もあり、下水道中水道などとの区別を強調する場合に上水道と呼ばれることが多い。

上水道の構成

水源

上水道の歴史

世界の上水道の歴史

水道のルーツは古代地中海沿岸諸国とされる。当初は、深いところにある井戸の水を遠くに運ぶための水路であったと考えられている。古代ローマ人は後世「ローマ水道」と呼ばれることになる巨大なネットワークを構築したが、中世以後衰微する。

水道の近代化は1787年パリで蒸気式揚水用ポンプが使われ、1829年ロンドン砂濾過池による浄水設備の設置以降のことであり、鉄製パイプによる水道管の開発など19世紀ヨーロッパで急速に発達した。

日本の上水道の歴史

日本現役最古の上水道である轟泉水道
ヘンリー・スペンサー・パーマー胸像(近代水道発祥の地、横浜市野毛山公園)

日本では、16世紀半ば、北条氏康の小田原支配時に早川から水を引き、小田原城下に飲用として供した小田原早川上水が最古の水道と考えられている。

豊臣秀吉小田原征伐に参陣した諸大名たちは、この上水を見て、自領の上水開設の参考にしたものと考えられている[1]

徳川家康もその一人で、1600年頃の江戸の都市建設のために井之頭池から引いた神田上水をはじめ、その後、玉川上水千川上水などが江戸の町に引かれていった(後に青山亀有(本所)・三田の3つを加えて「六上水」と称した)。

現代から見れば、浄水施設や各戸給水がないという問題点があったものの、当時世界でもっとも進んだ設備を有していた。

日本で最初に本格的都市型、埋設式上水道を敷設したのは、讃岐高松藩と言われている。藩主松平頼重は、玉川上水より9年早い寛永21年(1644年)、矢延平六に命じて、高松城下に、配水枡・配水管を地中に埋設した本格的な上水道を敷設した。また、日本で現在も使われている最古の水道は、熊本県宇土市に在る轟水源を水源とする轟泉水道宇土藩初代藩主細川行孝が造り寛文3年(1663年)に完成したものである。

始めは丸い土管水道管で造られていたが、完成後100年程して6代目藩主細川興文のとき丈夫で長持ちする石の水道管に改修され今日に至る。

日本の近代的水道は、1887年(明治20年)10月17日に、横浜外国人居留地で給水されたのが始まりである。当時居留地では、井戸を掘っても塩水が混じり、飲用に適さなかった。そこで当時の神奈川県知事沖守固は、英国陸軍工兵大佐の技師ヘンリー・S・パーマーを顧問に招き、資材も英国からの輸入に頼る形で、相模川の上流に水源を求めて近代水道の建設に着手した。

1885年(明治18年)に始められた工事は、1887年(明治20年)9月に竣工し、翌月から給水が始められた。近代水道は、1890年(明治23年)に水道の全国普及と水道事業の市町村による経営を内容とする水道条例が制定されたことにより、都市部で急速に実用化された。

旧来の水道設備が充実していたために整備が遅れていた東京でも、1898年(明治31年)には多摩川から淀橋浄水場を経由して、市内へと配水する設備が完成した。

日本に近代上水道が導入されたきっかけとしてはコレラなどの伝染病への対策という面もあるが、多少なれど事業当事者にとっての利潤という面も無視できなかった。東京府水道の建設などは当時の政府/内務省と当時の野党である改進党の思惑に、条約改正を目論む外務省が関わる東京改造計画が絡んだ[2]

日本では上水道網の導入が検討されていた明治中期、上水道が需要を集める保証は無かったとされている。特に湧水に恵まれた京都市などでは「京都の人がわざわざ金を払って水道を使うだろうか?」「使うだけの『水質』の魅力が水道にあるのか?」と甚だ疑問の目が向けられていた[3]

アメリカでの歴史

アメリカ国内の水道事業は個人の井戸から発展したもので、1652年マサチューセッツ州ボストンに最初の水道事業体が発足した[4]1832年にはバージニア州リッチモンドに最初の近代的な浄水場が建設された[4]

アメリカでは植民地時代から1850年頃まで民間による水道経営が主流となっていた[4]。しかし、富裕層が多く住む地域での給水に優先的に投資が行われていたこと、水道会社の利益が最大になるよう水道料金が設定されていたこと、水質への配慮が不十分であったことなどから公営の水道事業が徐々に増えていった[4]。また、19世紀に入って都市化が急速に発展するとともにコレラチフスなどの水系伝染病が大流行したが、水道が未整備の地域で汚染された井戸水や河川表流水を人力で汲んで用いていたことが原因であることが明らかとなってからは、近代的な浄水場の建設や配水管・給水管の整備が進んだ[4]

世界の水道業

世界の水道企業

欧州や米国では水道事業を民間に開放しているところもあり、必ずしも自治体が提供する公営事業とは限らない。イギリスフランスオランダ等のように水道事業を民間会社が行っているのが一般的な国もあり、これらの国の水道運営会社は世界各国にも進出し水メジャーと呼ばれている。水メジャーの世界3大企業はフランスのスエズヴェオリア・ウォーター、イギリスのテムズ・ウォーターである。このほかにもベクテルのような建設関連企業が海外での水資源開発や水道事業の受託を行っている。

歴史的には、リヨン市の水道事業が民間委託化されたのが1853年であるが、欧米で民営化が広く行われるようになったのは20世紀に入ってからであった。2008年現在、全世界の水道供給人口50億人のうち、民営化された水道企業が水を供給しているのは4億人である[5][6]

世界市場での水道企業シェア
企業名 給水人口
フランスの旗 フランス スエズ 1億2500万人
フランスの旗 フランス ヴェオリア 1億0800万人
イギリスの旗 イギリス テムズ・ウォーター 7000万人
フランスの旗 フランス SAUR 3700万人
イギリスの旗 イギリス ユナイテッド・ユーティリティーズ 2000万人

日本の上水道

日本の法律では水道法による水道のことを指し、この定義では「導管およびその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する施設の総体をいう」とされている。

なお日本でも水道法2001年に改正され、水道事業の包括的な民間委託が可能となった[7]

2025年には世界全体で100兆円の市場となると言われている水道事業には、商社やメーカーだけでなく水道事業のノウハウを持つ日本の自治体の水道局も参入へ向けた行動を起こしている[8]

日本国内でも水道の民営化や包括的な委託の受け皿となるべく企業が設立されるとともに、一部の地方都市で実際に包括的な委託を受託した例もある[9][10]。しかし、日本国内では大規模な水道事業を民営化したり、運営全てを民間企業に委託(包括的委託)した例は無い。なお、浄水場の運転操作や保守点検等の一部分や、料金徴収など周辺事業を民間委託している例は多数あるが、これらは水道事業に関わる経営判断を含め多くの部分を民間に任せている欧米の方式とは異なっている。

日本国内では経済的合理性や海外進出を考える商社やメーカー等の企業育成を考えて、水道企業を民営化したほうがよいとする意見や、水資源の公共性や水道の安定供給・安全性を考えて公営事業のままでよいとする意見など種々ある。また、一部の発展途上国での失敗例(ボリビアコチャバンバ水紛争等)を取り上げて民営化に反対する意見もある。

水道事業

一般の需要に応じて、水道により飲用に適するを供給する事業のうち給水人口が100人を超えるものを水道事業という。

  • 簡易水道事業 - 水道事業のうち給水人口が5,000人以下であるもの(水道法)
  • 水道用水供給事業 - 水道により水道事業者に対してその用水を供給する事業(水道法)
  • 上水道(事業) - 水道事業のうち簡易水道を除いた給水人口が5,000人を越えるものを、上水道(事業)ということがあるが、厳密には水道法で定義された概念ではない。

水道事業者

水道事業を経営しようとする場合は、厚生労働大臣または都道府県知事の認可を受けなければならない。認可を受けた水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ拒むことができず、原則として、水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。また、施設を変更したり、料金を変更するときは、厚生労働大臣等の認可を受けなければならないなど、水道法の規制を受ける。

現在、水道事業はそのほとんどが地方公共団体により経営される企業(地方公営企業)によって行われ独立採算制で運営されている。多くの地域で、個々の需用者と直接契約して給水する「水の小売り」は各市町村の水道事業が担当している。都府県営水道がある地域でも「水の問屋」として各市町村に対して給水するのが普通だが、例外として、東京都(23区全域と多摩地区の一部)・千葉県(北西部の大部分)・神奈川県(中央部の大部分)などでは、都県営水道が直接利用者と契約して給水している。また、主に上水道に従事する公務員は、地方公営企業の職員として、水道事業による収入から給与・手当が支給される。一方、主に簡易水道に従事する公務員は、首長部局の職員として、簡易水道事業を所管する特別会計から給与・手当が支給される。

水道事業を行なう主体は、都道府県では水道局あるいは企業庁・企業局の水道部門である。市町村では、水道局・水道部・水道課と呼ばれているほか、上下水道局・建設部などの一部門となっている自治体も多い。複数の市町村にまたがる企業団組合が水道事業を行なう地域もある。近年、水道料金の値上げが多く、その理由として水源地の水利権の高コストや老朽施設の更新、建設時の借入金負担や市町村合併に伴う価格見直しや節水へ意識誘導する目的で単価を上げると言った理由がある。

アメリカの上水道

水道事業

アメリカ合衆国の水道事業体は、環境保護庁(EPA)により、市町村水道、専用水道、季節専用水道の3つに分類されている[11]

  • 市町村水道(Community Water System(CWSs) - 1年を通じて定住人口に対し給水している水道事業体[11]
  • 専用水道(Non-Transient Non-Community Water Systems(NTNCWSs) - 25人以上の定住人口に対して6か月以上給水している自家用水道(学校・工場等)の水道事業体[11]
  • 季節専用水道(Transient Non-Community Water System(TNCWSs)) - 住居地域以外において移動人口に対して給水している自家用水道(ガソリンスタンド・キャンプ場等)の水道事業体

    世界で水道水が飲める国は少なく、以下の16カ国が安全に水道水が飲めると言われている[12]

    • 日本
    • アラブ首長国連邦
    • オーストラリア
    • ニュージーランド
    • アイスランド
    • アイルランド
    • スウェーデン
    • フィンランド
    • ドイツ
    • オーストリア
    • クロアチア
    • スロベニア
    • モザンビーク
    • レソト
    • 南アフリカ
    • カナダ

    水質