乗鞍岳
Norikura-air.jpg
信州側の奈川渡ダム上空より望む乗鞍岳
標高 3,025.73[1] m
所在地 日本の旗 日本
長野県松本市
岐阜県高山市
位置 北緯36度06分23秒
東経137度33分13秒
座標: 北緯36度06分23秒 東経137度33分13秒[2]
山系 飛騨山脈(北アルプス)
種類 複合火山[3]活火山ランクC[4]
噴火警戒レベル対象外火山(平常)[5]・常時観測火山
初登頂 1683年円空上人)
乗鞍岳の位置
Project.svg プロジェクト 山
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乗鞍岳(のりくらだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)南部の長野県松本市岐阜県高山市にまたがる剣ヶ峰標高3,026m)を主峰とする山々の総称。山頂部のカルデラを構成する最高峰剣ヶ峰朝日岳などの8峰を含め、摩利支天岳、富士見岳など23の峰があり、広大な裾野が広がる。飛騨側の高山市街地などから大きな山容を望むことができ、親しまれてきたである[6][7]

概要

乗鞍火山の火山体地形図

山体は岐阜県と長野県に跨がる活火山日本で19番目に高い山[8]。活火山ランクC[4]気象庁による常時観測対象の47火山に含まれる[9]が山頂部に噴気地帯は存在しない[10]。比較的新しい火山であることから穏やかな山容が特徴で、最新の噴火は2000年前の恵比寿岳での噴火とされている。乗鞍岳を含む飛騨山脈の主な山域は1934年昭和9年)12月4日に中部山岳国立公園の指定を受け[注釈 1][11]。長野県側の麓には溶岩流で形成された乗鞍高原が広がる。1949年に岐阜県道の観光道路で標高2,702 mの畳平までバスが運行されるようになると、大衆化し「雲上銀座」と呼ばれ観光地として賑わった[12]。長野県側からも畳平まで乗鞍エコーラインが開通し山麓にはスキー場が建設され周辺には温泉地があり、四季を通じて美しい景観に恵まれ、乗鞍岳の山域は観光地、保養地として発展している[12]日本百名山[13]新日本百名山[14]信州百名山[15]ぎふ百山[16]一等三角点百名山[17]に選定されている。

山名の由来と変遷

麓の高山市から望む雲の上の峰々が南北に連なる乗鞍岳

873年貞観15年)の日本三代実録で、飛騨国司の言葉

大野郡愛宝山に三度紫雲がたなびくの見たとの瑞兆朝廷に言上した — 『日本三代実録』(873年)

が残されており、「愛宝山(あぼうやま)」と呼ばれその当時から霊山として崇拝されていた[18][19]平安時代から室町時代にかけて古歌で「位山」と呼ばれ、1645年正保2年)頃に乗鞍岳と呼ばれるようになったとされている[注釈 2][18][19]1829年文政12年)の『飛州誌』では、「騎鞍ヶ嶽」と記されていた[12]。飛騨側から眺めた山容がのように見えることから、「鞍ヶ嶺(鞍ヶ峰)」と呼ばれていた[13][20]日本には同名の乗鞍岳が複数あり、「乗鞍」は馬の背に鞍を置いた山容に由来している[21]信州では最初に朝日が当たる山であることから「朝日岳」と呼ばれていた[注釈 3][18][22]最高峰剣ヶ峰の別称が、「権現岳」[注釈 4][22]。魔王岳と摩利支天岳は円空が命名して開山したとされている[22]。1963年(昭和38年)11月に乗鞍国民休暇村(休暇村乗鞍高原)の開設に伴い、番所平と金山平と呼ばれていた周辺一帯が乗鞍高原と呼ばれるようになっていった[23]。南北に多数の峰が連なることから「乗鞍連峰」と呼ばれることもある[6]

火山・地勢

山頂直下西にある火口湖の権現池

日本の火山としては富士山御嶽山に次ぐ高さである[注釈 5][24]。乗鞍岳は複数の火山が南北に並ぶ複合火山である。千町火山体(せんちょうかざんたい、128-86万年前に活動した古期乗鞍火山)と烏帽子火山体、四ッ岳火山体、恵比寿火山体、権現池・高天ヶ原火山体(32万年前に活動を開始した新期乗鞍火山)で構成されている[10][24][25]。古い火山体の千町火山体と烏帽子火山体では、浸食崩壊が進んでいる[25]。新期の火山体は山頂付近に分布する火山体や山腹に分布する溶岩ドーム溶岩流からなる大規模な成層火山。剣ヶ峰の噴火での直下西に権現池の火口湖が形成された[20]。約9000年前に現在の乗鞍岳の山容が形成された[26]

山頂部は南北6 km、山体は北の安房峠から南の野麦峠まで南北15 km、東西に30 km、山域の面積は約250 km2と裾野が広いのが特徴で[24]、北アルプスの中では最も広い山域を持つ[20]乗鞍高原などの8つの平原がある。火山湖堰止湖の12の池があり、山頂直下西にある権現池は、日本では御嶽山の二ノ池に次いで2番目の高所にある湖沼。梓川神通川飛騨川の源流となる山で、それらの分水嶺となっている[18]。山頂付近の積雪が多く、乗鞍スカイラインの開通のために長期間の除雪が必要となる。夏でも一部の北東斜面などには雪渓が残り、夏山でのスキーが可能となっている。西山腹の千町火山体の溶岩台地上の千町ヶ原から奥千町にかけては、池塘が点在する高層湿原となっている[27]

活火山

火山史

古期乗鞍火山

  • 128-125万年前 - 千町火山体の乗鞍火山の噴火が始まり、千町北溶岩と黍生溶岩を流出し、黍生火砕岩を噴出した[28]
  • 92-86万年前 - 千町火山体で活発に活動し、ダナの岩溶岩、神立原溶岩、千町溶岩、朝日滝溶岩、大峰溶岩、県境溶岩を流出した[28]。この活動で権現池付近を中心にほぼ円錐形の山容が形成された[26]
  • 50万年ほど火山活動は休止しその間に、大規模な山体崩壊により千町火山体の北側は崩れ去った[26]

新期乗鞍火山

  • 32-12万年前 - 千町火山体の北部の崩壊したカルデラ内の烏帽子火山体で火山活動が始まり、烏帽子溶岩、富士見溶岩、桔梗ヶ原溶岩、摩利支天溶岩、前川溶岩、大黒溶岩を流出した[28]。12万年に二つの火口を持つ成層火山が形成された[注釈 6][26]
  • 10万年前 - 権現池・高天ヶ原火山体で火山活動が始まりで、濁川溶岩、番所溶岩、ダナ新谷溶岩、平金溶岩、位ヶ原溶岩、嶽谷溶岩、ダナ東谷溶岩を流出し、前川本谷火砕流堆積物が形成され、高天ヶ原火砕岩と屏風岳火砕岩を噴出した[28]
  • 4万3千年前 - 膨大な番所溶岩流により乗鞍高原の原型が形成された[29]
  • 4万年前 - 浸食された烏帽子火山体上の四ツ岳火山体で火山活動が始まり、四ツ岳溶岩を流出した[26][28]
  • 2万年前 - 浸食された烏帽子火山体の上で恵比寿火山体の火山活動が始まり、恵比寿溶岩を流出した[26]
  • 9600年前 - 剣ヶ峰で断続的にブルカノ式噴火Vulcanian eruption)がはじまり、火山灰(剣ヶ峰火山砂)を噴出した[10][28]
  • 9200年前 - 剣ヶ峰の噴火により、位ヶ原テフラ(水蒸気噴火により火山灰を噴出、位ヶ原火山灰が形成され、その後スコリア噴火により位ヶ原スコリが形成された。)を放出し、岩井谷溶岩が西側に流出した[10][28]
  • 以後 - 何回かの水蒸気爆発を起こした[10][注釈 7][30]
恵比寿岳直下東にある火口湖の亀ヶ池
  • 2000年前 - 恵比寿火山体水蒸気爆発噴火後、恵比寿岳第1テフラが形成され、その後の穏やかな噴煙活動噴火により恵比寿岳第2テフラが形成されたが、併せて発生した激しいブルカノ式噴火により恵比寿岳第3テフラを形成する[31]

有史以降

  • 1990年(平成2年)1月24日 - 南南西約10 kmでM4.2の群発地震が発生[10]
  • 1991年(平成3年)1月23日 - M4.2の地震が発生、前年から地震が、1992年末まで減少しつつ継続した[10]
  • 1995年(平成7年)8月 - 南西約2 kmで地震が多発した[10]
  • 100年活動指数と1万年活動指数がともに低い火山であることから、「活火山ランクC」の指定を受けている[4]。2009年(平成21年)6月に火山噴火予知連絡会により、山体浅い部に地震活動が認められていることから、過去100年以内に火山活動の高まりが認められている火山として、火山防災のために監視・観測体制等の必要がある火山の一つの指定を受けている[32]。火山性の地震群発は現在でも観測されている[5]。活火山としての活動力を失っていて山頂部に噴気地帯はないが、湯川(梓川支流)の最上流部では火山ガスが発生している[21]。周辺では気象庁国土地理院防災科学技術研究所名古屋大学により地震計傾斜計、空振計、GPS、遠望カメラが設置され火山活動の監視と観測が行われている[33]。気象庁は2007年(平成19年)12月1日に噴火予報で「平常」を発表しており、「噴火警戒レベル対象外火山」であり、2013年7月度の気象庁火山部火山監視・情報センターの月例報告で、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過し噴火の兆候は認められない」と発表している[5]。しかし、1000年以上噴火しておらず、そろそろ噴火をしても良い時期と考える火山学者もいる[34]。2014年の木曽御嶽山噴火災害をうけて、ハザードマップが作成されていない状態の解消を目指し、乗鞍防災協議会設置のための火山対策検討会議が行われた[35]

    乗鞍岳の峰々

    飛騨側の位山から望む乗鞍岳の主な峰々
    山頂部には権現池を火口湖とするカルデラがあり、水分岳、朝日岳、蚕玉岳(こだまだけ)、雪山岳、剣ヶ峰(最高峰、標高3,026 m)、大日岳、薬師岳、屏風岳の8峰から構成される(権現池・高天ヶ原火山体)。

    山頂部には北から順番に以下の峰が連なり、乗鞍23峰と呼ばれている。その他の峰として、高天ヶ原(たかまがはら、2,829 m)と金山岩(かなやまいわ、2,532 m)がある。最高峰の剣ヶ峰には一等三角点が設置されている[1]。多くの峰は登山規制が行われていて、立ち入りが禁止されている[36]

    山名 よみ 標高
    (m)
    [1][37]
    剣ヶ峰からの
    方角と距離(km)
    火山体名 備考
    安房山 あぼうさん 2,220 16 cardinal points NNE.png北北東 10.1 安房トンネル
    十石山 じゅっこくやま 2,525 16 cardinal points NNE.png北北東 7.2
    大崩山 おおくえやま 2,523 16 cardinal points N.png北 5.7
    猫岳 ねこだけ 2,581 16 cardinal points N.png北 5.2
    硫黄岳 いおうだけ 2,554 16 cardinal points NNE.png北北東 4.8
    四ツ岳 よつだけ 2,751 16 cardinal points N.png北 4.5 四ッ岳火山体
    烏帽子岳 えぼしだけ 2,692 16 cardinal points N.png北 3.9 烏帽子火山体
    大丹生岳 おおにゅうだけ 2,698 16 cardinal points N.png北 3.7
    大黒岳 だいこくだけ 2,772 16 cardinal points NNE.png北北東 2.4
    恵比寿岳 えびすだけ 2,831 16 cardinal points N.png北 2.3 恵比寿火山体 遊歩道
    魔王岳 まおうだけ 2,760 16 cardinal points N.png北 2.2 遊歩道
    富士見岳 ふじみだけ 2,817 16 cardinal points N.png北 1.7 登山道
    里見岳 さとみだけ 2,824 16 cardinal points NNW.png北北西 1.9
    不動岳 ふどうだけ 2,875 16 cardinal points N.png北 1.5
    摩利支天岳 まりしてんだけ 2,872 16 cardinal points N.png北 1.2 乗鞍コロナ観測所
    水分岳 みくまりだけ 2,896 16 cardinal points NW.png北西 0.6 権現池・
    高天ヶ原
    火山体
    朝日岳 あさひだけ 2,975 16 cardinal points NNW.png北北西 0.4
    蚕玉岳 こだまだけ 2,979 16 cardinal points NNW.png北北西 0.2 登山道
    雪山岳 せつざんだけ 2,891 16 cardinal points W.png西 0.7
    剣ヶ峰 けんがみね 3,026 16 cardinal points O.png 0 乗鞍岳の最高峰
    大日岳 だいにち 3,014 16 cardinal points SSW.png南南西 0.3
    薬師岳 やくしだけ 2,950 16 cardinal points WSW.png西南西 0.7
    屏風岳 びょうぶだけ 2,968 16 cardinal points SW.png南西 0.6

    山頂部の池

    山上部にある不消ヶ池(手前)と鶴ヶ池(奥)

    山頂付近には、以下の8箇所に12個の火口湖と堰止湖がある[37][6]

    • 権現池 - 山頂直下西にある権現池・高天ヶ原火山体の活動終期に形成されたコバルトブルーの火口湖[38]。御嶽山のニノ池に次いで日本で2番目の高所にある湖沼[39]
    • 五ノ池 - 里見岳の南にある溶岩流による堰止湖[38]
    • 不消ヶ池(きえずがいけ) - 富士見岳と摩利支天岳の間にあり、真夏でもが残ることがある[注釈 8][38]
    • 鶴ヶ池 - 畳平の東にあり、名称はの形状に似ていることに因む[注釈 9]
    • 亀ヶ池 - 恵比寿岳と魔王岳との間にある恵比寿火口、名称は周氷河地形の構造土が発見されたことに因む[38]
    • 大丹生池 - 大丹生池に西にある溶岩流による堰止湖[38]
    • 土樋池 - 烏帽子岳の西にある溶岩流による堰止湖[38]
    • 無名の池 - 四ツ岳と硫黄岳の間。

    地質

    古生層の安山岩類や花崗岩類、デイサイト質の溶岩などで構成されている[18][21]。乗鞍岳ではパン皮状火山弾(breadcrust bomb)が見られ、火口付近では吹き飛ばされた古い岩石の破片、スコリア、軽石なども見られる[40]。山頂付近には亀甲砂礫や条線砂礫などの構造土が見られ[18]地理学者田中阿歌麿が日本の周氷河地形として初めて亀ヶ池で構造土を発見した[21]。乗鞍高原の鈴蘭には武田信玄によって開発されたとされる大樋鉱山があって、1640年寛永17年)から1697年元禄10年)にかけて盛んにが産出されていた[18][29]。東山腹の梓川の支流湯川沿いの白骨温泉では石灰華(炭酸カルシウム)の沈殿物が見られ、「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」が1952年(昭和27年)3月29日に国の特別天然記念物の指定を受けた[41]

環境

乗鞍コロナ観測所で観測された月ごとの平均気温(1971-2000年)

自然保護の観点から乗鞍スカイライン乗鞍エコーライン2003年からマイカー規制が実施され、バスタクシーを除き一般車両の通行が禁止されるようになった。これらの山岳道路では麓の山地帯、亜高山帯、高山帯へと植生の垂直分布の移行を観察することができる[39]。東側の乗鞍高原の山麓では明治時代に放牧ソバ畑の開拓が行われた[29]

気候

山頂付近の摩利支天岳(標高2,872 m)頂上の乗鞍コロナ観測所で観測された、毎日の平均気温、最低気温、最高気温の月ごとの1971年(昭和46年)から2000年(平成12年)までの30年間の平均値を下表に示す[42]。1月下旬から2月上旬かけてが最も寒く、8月初旬が最も暑い[42]。畳平へのシャトルバスの夏の早朝便ではカーエアコンで暖房される。

月別の平均気温、最低気温、最高気温 (1971-2000年の平均値)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年平均
平均気温( -15 -15 -11 -5 1 6 9 11 7 0 -6 -12 -3
最低気温(℃) -17 -17 -14 -8 -2 1 6 8 4 -2 -8 -14 -5
最高気温(℃) -13 -12 -8 -1 4 9 12 14 9 3 -4 -10 0

また、年間平均気温、および最低気温、最高気温の年間平均値を下表に示す[42]。年間の平均気温の最低値は1986年の-4.1℃、最高値は1998年の-0.5℃。

年間の平均気温、最低気温、最高気温 (1968-2000年の平均値)
平均
気温
(℃)
最低
気温
(℃)
最高
気温
(℃)
平均
気温
(℃)
最低
気温
(℃)
最高
気温
(℃)
平均
気温
(℃)
最低
気温
(℃)
最高
気温
(℃)
1968年 -0.8 -4.7 3.2 1979年 -1.9 -4.8 1.0 1990年 -1.6 -3.9 1.2
1969年 -2.2 -5.5 2.3 1980年 -3.0 -5.5 -0.5 1991年 -2.1 -4.5 0.4
1970年 -1.4 -4.5 1.8 1981年 -2.6 -5.0 -0.2 1992年 -2.4 -4.8 0.1
1971年 -2.8 -6.1 0.5 1982年 -2.4 -5.1 0.5 1993年 -3.0 -5.0 -0.7
1972年 -2.2 -5.7 1.3 1983年 -2.8 -5.1 -0.4 1994年 -2.3 0.2
1973年 -2.0 -5.5 1.5 1984年 -3.3 -5.5 -1.0 1995年 -3.7 -5.9 -1.5
1974年 -2.5 -5.7 0.7 1985年 -2.7 -4.9 -0.6 1996年 -2.6 -5.2 -0.1
1975年 -2.2 -5.5 1.3 1986年 -4.1 -6.6 -1.6 1997年 -2.3 -4.7 0.1
1976年 -3.2 -6.3 -0.1 1987年 -2.0 -4.6 0.6 1998年 -0.5 -3.4 2.3
1977年 -2.1 -5.2 1.0 1988年 -3.5 -5.7 -1.1 1999年 -2.4 -5.1 0.3
1978年 -2.3 -5.3 0.8 1989年 -2.3 -4.7 0.3 2000年 -2.6 -5.3 -0.7

9時と15時における風力の月ごとの1989年(平成元年)から1997年(平成9年)までの9年間の平均値を下表に示す[43]風向きは年間を通じて北西が主流となっている[42]。冬期に風が強い日が多く、9時、15時の区別なく1-2月には風力4.9-5.2(風速換算で約10 m/s[42]

月別の風力(m/s) (1989-1997年の平均値)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年平均
9時 5.0 5.1 4.6 3.8 3.1 2.9 2.7 2.5 2.7 2.9 3.8 4.6 3.6
15時 5.2 4.9 4.4 3.6 2.8 2.7 2.6 2.4 2.6 2.8 3.7 4.5 3.5
乗鞍エコーラインの畳平付近(標高約2,700 m)の除雪部の雪壁(2013年5月21日)

9時と15時における月別天気出現率(%)(1968-1997年の平均値)を下表に示す[43]。乗鞍岳では夏に午後になるとや雲の発生が活発になることが多く、他の山岳地帯と同様に午前中の方が天候が安定している[42]。畳平では濃霧で視界不良となることもある[44]。例年9月末-10月にかけて山頂部で初冠雪し、6月にも雪が降ることがある[43]

9時の月別天気出現率(%)(1968-1997年の平均値)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
快晴 21 20 25 26 22 11 11 19 18 32 32 28
5 7 9 11 13 15 17 18 13 11 7 7
9 14 18 22 27 30 20 17 23 18 13 9
0 0 1 6 12 19 21 15 9 9 4 0
42 36 26 13 4 1 0 0 0 5 19 36
15時の月別天気出現率(%)(1968-1997年の平均値)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
快晴 15 13 14 14 9 2 2 2 5 18 24 24
7 7 10 14 14 10 11 14 12 13 8 8
13 16 20 28 35 33 25 29 30 23 17 9
0 0 1 6 12 21 25 18 21 9 4 0
50 43 33 17 6 1 0 0 0 8 21 38

動物

山域にはオコジョトウホクノウサギニホンカモシカツキノワグマ[注釈 10][45]イワヒバリホシガラス、国の特別天然記念物に指定されているライチョウなど生息する[21]長野大学生態学研究室によりライチョウの詳細な生息調査が行われている[46]。ライチョウの乗鞍岳における総個体数は1983年の調査では130羽、1994年の調査では109羽と減少傾向にある(環境省のレッドリストの絶滅危惧IB類の指定を受けている[47]イワツバメ、イワヒバリ、カヤクグリ、ライチョウ、ルリビタキの繁殖が確認されていて[47]カラ類キセキレイ、ホシガラスなど多くの野鳥が生息している[21]。白樺峠は、乗鞍高原一帯を通過していくタカの渡りの観察地として知られていて、9月下旬にはサシバハチクマ、10月中旬にはノスリツミなどの渡りが見られる[48]。乗鞍高原では7種のコウモリの生息が確認されていて、日本の固有種であるクビワコウモリの繁殖が日本で初めて乗鞍高原で確認された[49]。長野県の天然記念物の指定種の高山クモマベニヒカゲミヤマモンキチョウクジャクチョウコヒオドシなどの蝶が生息し[47]、岐阜県のレッドリストで指定を受けている高山アルプスカバナミシャクアルプスギンウワバアルプスヤガアルプスクロヨトウオオギンスジコウモリクモマウスグロヤガサザナミナミシャクタカネモンヤガナカトビヤガヤツガダケヤガなどの確認記録がある[50]

植物

志村烏嶺が乗鞍岳で高山植物の採集と研究を行っている。位ヶ原と桔梗ヶ原では大規模なハイマツの群生地となっている[21]コイワカガミキバナシャクナゲミヤマキンバイクロユリコマクサイワギキョウヨツバシオガマなどの植物が見られ、高山ならではの自然を堪能する事ができる。富士見岳、魔王岳などの風衝地にはコマクサの群落が広がっている。大黒岳は山全体にコマクサが分布していたが、人の増加に伴い踏み荒らされ大幅に減少した[51]。雪解けとともに開花が始まり、秋にはコケモモダケカンバチングルマナナカマドなどの紅葉が見られる。江戸時代大樋鉱山で銀を抽出する際にを作るために乗鞍高原周辺の原生林シラビソブナが切り尽くされた[29]。その結果乗鞍高原鈴蘭付近は、シラカバなどの二次林スズランヤナギランなどの草原となりっており、ミズバショウなどの高原植物も分布している[21]。乗鞍高原には湿原があり、「乗鞍岳湿原」として日本の重要湿地500の一つに選定されている[52]。子ノ原高原はレンゲツツジの名所として知られていて[53]、「子ノ原高原レンゲツツジ群落」が1969年(昭和44年)8月5日に高山市の天然記念物の指定を受けている[54]。西面中腹の千町ヶ原の湿原には、キソチドリコバイケイソウモウセンゴケなどが分布する[55]。東面中腹の位ヶ原では、9月下旬-10月上旬ごろにナナカマドダケカンバ紅葉する[56]。乗鞍岳では山麓から山上部にかけて以下の植物の垂直分布が見られる[57]。山岳道路開通に伴い帰化植物が侵入し、北米原産のオオハンゴンソウが乗鞍スカイラインの旧料金所の上部の亜高山帯で、セイヨウタンポポが畳平の駐車場で、ムラサキツメクサが鶴ヶ池付近で確認されている[58]。乗鞍スカイライン沿いでは針葉樹の立ち枯れが確認されている[47][59]

  • 山地(山麓 - 標高1,500 m付近) - ブナミズナラなどの落葉広葉樹
  • 亜高山帯(標高1,500-2,500 m付近) - トウヒシラビソコメツガなどの常緑針葉樹
  • 高山帯(2,500 m付近から上部) - ハイマツ、高山植物

乗鞍自然観察教育林

畳平の乗鞍自然観察教育林のお花畑に整備された木道

乗鞍岳の高山帯と大部分の山域は国有林であり、林野庁中部森林管理局飛騨森林管理署内にある[60]。畳平周辺の多くの高山植物が分布するハイマツ帯は、林野庁によりレクリエーションの森の「乗鞍自然観察教育林」の指定を受けている[60]。畳平には飛騨森林管理署詰所があり、その南側のお花畑には観察用の木道が整備されている。

岐阜県乗鞍環境保全税

乗鞍地域の環境保全を目的として2002年(平成14年)10月9日に岐阜県議会で「岐阜県乗鞍環境保全税条例」が可決され、2003年(平成15年)5月15日のマイカー規制開始時から乗鞍スカイラインに乗り入れる自動車に対して課税と徴収が行われるようになった[61]。税収は環境影響評価調査や環境パトロール員の配置などの乗鞍環境保全施策に使われている[61]。課税標準は以下である[62]

  • 観光バス(乗車定員が30人以上) - 3,000
  • 一般乗合バス(乗車定員が30人以上) - 2,000円、濃飛バスのシャトルバスが該当する。
  • 自動車(乗車定員が11人以上29人以下) - 1,500円
  • 自動車(乗車定員が10人以下) - 300円、タクシーなどが該当する。

歴史

信仰

山頂の剣ヶ峰にある岐阜県側の神社(乗鞍本宮奥宮

古くは「位山」と呼ばれ、山麓から遥拝されていた[12][63]。飛騨側では大丹生池付近、信州側では乗鞍高原山麓の梓水神社付近に遥拝所があったとみられている[63]修験者が登頂するようになると、山頂の飛騨側に乗鞍大権現、信州側に朝日権現神社が祀られ、霊山としての修行の場であった[63]。同じ飛騨地方にある白山御嶽山と比較すると宗教的な意味合いが薄い山であった[20]

飛騨側にはいくつもの信仰の道が作られ、麓には乗鞍神社が建立され、乗鞍信仰が盛んであった[63]。円食上人と木喰上人が修行のために登ったと伝えられている[12][20]

信州側では奈良時代室町時代には水神の霊山として、江戸時代にかけては戦の神としての信仰の山であった[63]。東面標高2,100 mの冷泉小屋脇には、乗鞍修験者の行場であった霊泉の湧水がある[64]。1600年代後半頃には大樋銀山の鎮守神として信仰された[63]。冷泉小屋上部の大雪渓下には、江戸時代に乗鞍岳を開山した宝徳霊神のがある[19]18世紀末には山頂の朝日権現神社でご来光を拝んだものにはご利益があるとれ、ご来光詣でが盛んに行われるようになった[63]

開発史