光磁気ディスク(ひかりじきディスク、magneto-optical disk (discとも表記される))とは赤色レーザー光と磁場を用いて磁気記録を行い、レーザー光を用いて再生を行う記録媒体の1つである。MO(エムオー)あるいはMOディスクと略す。最初の光磁気ディスクメディアおよび対応製品は1985年に5.25インチドライブが発売され[1]、1991年には3.5インチドライブがIBMから発売された[2]。規格は2000年代で消滅したとされる。
光磁気ディスクには磁性を持った記録層が形成されており、外部から電磁石による記録用の磁界を加えて媒体を磁化する点では磁気ディスクと似ているが、記録層が常温ではほとんど磁化されず、これを熱して磁化する点に特徴がある。記録の際に光の強度を変化させて磁界を一定とする光変調方式と、光の強度を一定として磁界を変化させる磁気変調方式がある。
磁気変調方式(MFM方式)では、以下の手順でデータが記録される。
この繰り返しにより磁性体にN極とS極の磁性が記録されていく。読み出し時には書き込み時よりも出力の弱いレーザを照射し、N極とS極の向きの違いによってレーザの偏光面が回転する現象(磁気光学カー効果)を検出しそれを0と1のデータとして読みとっている。
また光変調方式ではまず一定磁界・高出力レーザ光で記録層の磁力を一方向にそろえることで初期化(消去)し、続いて加える磁界を反転したうえで、記録したい部分を光で加熱し磁気を反転させて記録を行う。
光磁気ディスクメディアの論理フォーマットとしては、ハードディスク形式とスーパーフロッピー形式の2種類がある。
光磁気を用いた全てのディスクは広義でMOと呼ぶことが可能であるが、一般的に認知されているMOと呼ぶディスクはISO規格準拠の3.5インチ及び5.25インチのディスクである。
基本的には音声録音用の光磁気ディスクであるが、データ記録用のMDもあった。
MDの上位互換のメディアで、MDと同じサイズで1GBの容量を実現している。磁壁移動検出方式 (DWDD: Domain Wall Displacement Detection)を採用している。
三洋電機、オリンパス光学工業、日立マクセルの3社で開発された。記録方式にMFM方式、再生技術にMSR技術を採用し2インチ (5cm) 径で730MBの容量を持つ。
ソニーが開発した光磁気ディスク[5]で、3.5インチフロッピーディスクとほぼ同じサイズのカートリッジに納められており、容量は約650MB。HSの開発にあたっては日立製作所と3Mが協力している。1995年にSONYから発表され、将来的には2002年頃までに約2.5GBに容量を段階的に拡大する予定だった。しかし、当時普及していたMOとの互換性がない上にMOと比べてドライブやメディアが高額だったため普及しなかった。現在はドライブ、メディアとも製造・販売は終了しており、開発も停止されたままである。
1980年代から1990年代前半に磁気テープに代わる映像記録媒体として研究開発が行われ、アナログあるいはデジタル記録媒体として実用化された。ハードディスクの大容量化によって、ほぼ代替されている。ただし、1990年代後半から将来迎えるであろうハードディスクの記録密度の限界が問題視され、各磁気ディスクメーカーでは高速リードライト、高記録密度の光ディスクを研究している。
磁区拡大再生技術 (MAMMOS: Magnetic AMplifying Magneto-Optical System) といった記録再生技術や、青紫色レーザを利用することで5.25inchサイズで最大200GBの容量が見込まれている。このうちMAMMOSは従来のレーザ波長で20GB/12cm、現時点でのDWDDは従来のレーザー波長で3GB/5cmの容量とされる。なおDWDDの技術目標は100GB/12cm、青紫色レーザで200GB/12cmを見込んでいる。
2013年11月25日に発表されたこれまでとは全く違った技術である光スイッチング磁石を用いた記録方式もある。ディスクとしての媒体で供給できるのかまだ不透明であるが、平方インチあたり30GB記録可能でありブルーレイディスクを大きく超える容量になる。
MOの普及率は世界的に見た場合には決して高いものではなく、むしろ日本での普及の高さはかなり珍しい部類に入る。
1990年代にはドライブ単価の安いZipドライブが世界中で普及を見せ、MOは他のリムーバブルメディア共々その余波をまともに浴び普及は微々たるものだった。その後、1990年代後半からはCD-Rが安価に出回るようになり、さらにはフラッシュメモリの大容量・低価格化による普及も進んでいるためMOは地味な(あるいはそれ以下の)存在のままである。
一方、日本国内では当初から企業や官公庁を中心に登場時からデータの保存・運搬用として広く普及しており、デスクトップパブリッシングやデザイン・印刷・出版の分野では、そのメディア信頼性の高さと容量に対するコストパフォーマンスの良さから広く使われている。特にPC-9800シリーズではデバイスドライバを必要とせずSCSI接続のMOからのブートも可能だったため、Windowsの普及初期に広く出回った(PC/AT互換機ではデバイスドライバが必要)。Windows 95まではHDDレスのシステムも構築可能だった。1990年代にはZipドライブの普及に押され気味だった時期もあったが、Zipドライブが衰退し始めてからは一時期勢いを取り戻したこともあった。しかし代わってCD-RWやDVDドライブがパソコンに標準搭載されることが急増し、さらに高速なフラッシュメモリー(主にUSBメモリー)が安価に出回るようになり始めてからはすぐに衰退の一途を辿った。富士通よりCD-ROM・MOの両方が使えるコンボドライブが開発・試作されたが、市場販売には至らなかった。MOはドライブの小型化やインターフェースにUSBバスパワータイプを採用した製品が登場し、信頼性・長期保管性に長けたメディアとして見直す動きもあったが、大容量化でDVDやBD、DDS、フラッシュメモリーに遅れを取ったこともあり、需要は伸びることはなかった。関連企業により1999年結成された「MOフォーラム」[11]も2009年から休眠、2010年に解散[12]した。
MOディスクドライブの生産・販売はすべて終了している。オリンパスは2005年後半に生産を中止して2006年3月にMO事業から完全撤退した。コニカミノルタは2010年9月に販売を終了、富士通は2012年3月30日をもって全てのサポートを終了し[13]、バッファローも生産を終了、最後まで販売していたロジテックも2013年6月下旬に発売した「LMO-FC654U2」[14]が最終モデルとなった。
記録メディアについても、日立マクセルは2009年9月末に、三菱化学メディアは2009年12月末にMOディスクの販売を終了した[15]。アイ・オー・データ機器も販売を終了、ソニーは3.5インチMOに関しては2017年6月を最後に現行品のリストから外れ[16]、5.25インチMOに関しては2018年2月を最後に現行品のリストから外れた[17]。
ラジオ放送業務用としては、信頼性・耐久性・使い勝手の面からMOを積極的に採用しており、2000年代中盤以降はラジオ放送局内のデジタル化進展や業務用6mmテープの在庫希少化により番組制作・CM制作・番組搬入用の録音メディアとしてPro-MO(業務用MO)が使用されていた[18]が、2015年7月以降、2020年までに生産終了した[19]。
代表的なレコーダーとしては、DENON ProfessionalのDN-H5600N・DN-H4600NやCD制作時のマスターレコーダーとして、専用の5インチMO (5.2GB) を用いて、24bit/44.1kHzの音源を記録する、ソニーのPCM-9000があるが、いずれも生産終了した。MOの代わりにSDメモリーカード・コンパクトフラッシュなどフラッシュメモリーを媒体とした機材に代替されている。