割礼(かつれい)とは、男子の性器の包皮の一部を切除する風習。本項では主に文化・宗教との関わりについて述べる。

女性器切除(female circumcision)を『女子割礼』と称す事があるが、男性の割礼(circumcision)とは宗教的背景が異なる。また、男子の割礼が比較的無害であるのに対し、女性器切除は生死に関わる負担や生涯にわたる苦痛などの理由で先進国では悪習と批判されている。

語意

環状切開法による包茎手術の方法

聖書に記述されるcircumcisio(ラテン語)、circumcision(英語)の訳語として、漢字文化圏の言語(日本語・中国語・朝鮮語)で採用された。

日本語朝鮮語は「包茎手術(ほうけいしゅじゅつ)、朝鮮語: 包莖手術(포경수술)」を用い、中国語圏は「包皮環切術(簡体字包皮环切术繁体字包皮環切術拼音: Bāopíhuánqiēshù)」等を用いる。

circumcision英語)は『男性陰茎包皮の切除』である。宗教上の行為か否かに関わらず、医療行為としての包茎手術を含む。genital cutting は性器切断だが「割礼」とも翻訳され、これは割礼 (male genital cutting) と女性器切除 (female genital cutting) が含まれる。

キリストの割礼(グイド・レーニ画、1640年頃、部分)

概要

旧約聖書』に割礼の記述があることからユダヤ教イスラム教では信仰の一環として行われている。キリスト教圏でも衛生上の理由も兼ねて行われている場合がある。また、アフリカオセアニアの諸民族などでは宗教とは無関係に「伝統的な風習として」割礼が行われている(後述)。

ユダヤ教では、割礼はブリット (ברית/Brit) と呼ばれ、ヘブライ語で「契約」を意味する語である。ユダヤ教徒の家庭に生まれた乳児および改宗者(=ユダヤ人[1])は、割礼を行わなくてはならない。これはブリット・ミラーと呼ばれ、モーヘールと呼ばれる専門家が行う。現代では割礼に反対するユダヤ人もおり、その場合はブリット・シャーローム(命名式に相当)をもって、割礼の代わりとする。ただしブリット・シャーロームは律法(旧約聖書)に反するとして否定する者も多く、一般的な儀式として広まってはいない。

イスラム教(イスラーム)においては、コーランには言及がないものの、ハディースにこれに関する記載があり、慣行(スンナ)として定着[2]している。生後間もなくか、少年のうちに割礼が行われる。時期は生後7日目に行う場合から、10-12歳頃までの場合など幅がある。割礼後、祝宴が開かれ、盛装した男児が親族や近隣住民から祝福される。割礼を行っていない者が成人になってから改宗した場合は、解釈が一定ではないため必ずしも強制ではないが、なるべく割礼を行ったほうがよいとされる。

一方、キリスト教では、割礼を行う風習が無い地域にもキリスト教の布教を行い、割礼を行わない者がキリスト教へ改宗するための要件として割礼を要件としないという見解がパウロらによってまとめられたため、早い段階で割礼を行う習慣が廃れた。このことは『新約聖書使徒行伝等で触れられており、キリスト教が世界宗教として広まる一因となった。現在では全く自由であるが、正教会系の一部の教派・地域では割礼を行うことが奨励されている。近代以降、アメリカ合衆国などでは衛生的理由から、割礼が広まった(後述)。ただしキリスト教の一宗派であるスコプチの割礼では、男性は陰茎・睾丸・陰嚢の外性器すべてを切除し、女性は乳房や陰核、小陰唇などを切除する。

この他、オーストラリアアボリジニーの間では尿道の下部を切開する「尿道割礼」が、ミクロネシア連邦ポナペ島の住人や南アフリカ共和国からナミビアにかけて居住するホッテントット族の間では片方の睾丸を摘出する「半去勢」が行われていたが、いずれも成年男子への通過儀礼としての儀式すなわち割礼として行われている。

近年では男性の割礼も、児童虐待男性差別だとして反対されることも増えてきた。現代でも過半数の乳児に割礼を施しているアメリカ合衆国を中心に、医学的メリットを標榜する向きもあるが、デメリットの検証が相次ぐなど無差別に施術する根拠としては弱くなっている。[要出典]

歴史