台風(たいふう、颱風とも、英: Typhoon)とは、熱帯低気圧のうち北西太平洋または南シナ海に存在し、かつ低気圧域内の最大風速が約17.2 m/s(34ノット(kt)、風力8)以上にまで発達したものを指す呼称[1]

強風域暴風域を伴って強いをもたらすことが多く、ほとんどの場合、気象災害を引き起こす。上空から地球に向かって見ると反時計回りの積乱雲の渦からなる。超大型と呼ばれる台風は風速15m/sの強風域が半径800km以上と、とても大きな台風となる。「年別台風記事一覧」も参照。

定義

気圧が最も低い位置を「気圧中心」といい[2]、その位置と勢力で台風は定義される。普通の低気圧との最大の違いは、前線を伴っていないことである。

位置

1:ハリケーン、2:台風、3:サイクロン

北西太平洋の「東経100度線から180度経線までの北半球」に中心が存在するものをいう[3]。海域としては北太平洋西部(北西太平洋)およびその付属海である南シナ海東シナ海フィリピン海日本海などにあたり、陸域としては東アジア東南アジアミクロネシアのそれぞれ一部が含まれる。

最大風速が17 m/s以上の熱帯低気圧のうち、北インド洋にあるものは「サイクロン[注 1]と呼ばれる[3]。南太平洋、北太平洋(180度経線以東)、北大西洋の熱帯低気圧のうち最大風速が33 m/s(64 kt)以上のものは「ハリケーン」と呼ばれる[4][注 2]。ただし、台風、サイクロン、ハリケーンともに現象としては同一である[4][5]。これらの熱帯低気圧が地理的な境界線を越えた場合は呼び方が変わる。例えば、2006年に北東太平洋で発生したハリケーン・イオケは、西進して経度180度を越えたため台風12号になった。このように、区域を跨って台風に変わったものを越境台風と呼ぶ。逆に2019年台風1号は、マレー半島付近で東経100度線を越えたことによりサイクロンに変わった[6]

なお世界気象機関の国際分類では地理的な領域に関係なく、熱帯低気圧を最大風速によりトロピカル・デプレッション、トロピカル・ストーム、シビア・トロピカル・ストーム、タイフーンの4段階に分類している。この場合における「タイフーン」と本項で述べている「台風」は英語では共に"typhoon"と呼ぶが、概念としては異なる。

勢力

台風の場合、熱帯低気圧域内で最大風速17 m/s以上を満たしたものを指す[3]

台風の位置や中心気圧、最大風速、大きさの数値は過去の観測データの蓄積により確立されたドボラック法に基づいて人工衛星画像から推定し、地上や船舶で風速が観測できた場合にその都度修正していく方法を採っている[2]ため、「中心付近の最大風速」は必ずしも実測値ではない。例えば洋上にある台風中心の風速を実測するには航空機が必要となり、実際に1987年昭和62年)までは米軍航空機観測を実施していた時期もある[7]が、観測員や設備・運用等の負担が大きく、現在日本では航空機による観測は恒常的な手段としては行われていない(学術研究目的での観測例はある)。

ちなみに世界気象機関 (WMO) の世界気象監視計画 (WWW) により、北西太平洋海域の台風監視活動を行う中枢として、日本の気象庁が「熱帯低気圧プログラムに参画する地域特別気象中枢」(RSMC for TCP) に指定され、気象庁の判断が国際的には公式のものとされるが、この海域では中華人民共和国台湾フィリピンベトナムアメリカ合衆国などの気象機関がそれぞれ台風の監視を行い独自に推定を行っているため、機関によって風速等に多少の誤差が出ることもある[8]

「台風」の語源

日本で「台風」という呼称・表記が定まったのは、1956年(昭和31年)に指針として「同音の漢字による書きかえ」が示されて以降である[9]

日本では、古くは野のを吹いて分けるところから、野分(のわき、のわけ)といい、11世紀初頭の『枕草子』『源氏物語』などにもその表現を見ることが出来る[10][11]。ただし、野分とは暴風そのものを指す言葉であり、気象学上の台風とは概念が異なる[12]

江戸時代には熱帯低気圧を中国にならって颶風(ぐふう)と訳した文献(伊藤慎蔵によってオランダ語から翻訳された日本初の気象学書『颶風新話』)があるが、明治の初めにはタイフーンまたは大風(おおかぜ)などと表していた[13]

明治末頃、岡田武松によって颱風という言葉が生まれたとされており[9][14]、その後1956年(昭和31年)から台風と書かれるようになったが、その由来には諸説がある。主な説としては、以下のものが挙げられる[10]

  1. ギリシア神話に登場する最大最強の怪物・テュポン (τυφων, Typhon) に由来する「typhoon」から「颱風」となった。
  2. アラビア語で嵐を意味する「طوفان (tufan)」が東洋に伝わり、「颱風」となった。また、英語では「typhoon」(タイフーン)となった。
  3. 中国広東省で、南または東の激しい風のことを外国からの風のとして大風daai6fung1、ターイフォン)といい、その後、西洋に伝わり、ギリシア神話のテュポンの影響でギリシャ式の"typhoon"というつづりで書かれるようになり、東洋に逆輸入され「颱風」となった。
  4. 沖縄(当時は琉球)でつくられた言葉とする説:久米村の気象学者蔡温造語であるといわれる。

英語の「typhoon」は、古くは「touffon」と綴り、中国語の「大風」が由来とする説は不自然とされており、アラビア語起源、ギリシア語起源の二つの説が有力である。

ちなみに沖縄のウチナーグチでは「カジフチ(風吹き)」または「テーフー(台風)」と称される。

台風の構造と階級

台風の中心位置、最大風速、中心気圧、暴風域半径、強風域半径などを総称して台風諸元という[2]

台風の構造

熱帯低気圧の構造図(垂直方向に拡大してある)。目の周辺部では上昇気流、目の中心部の上空では下降気流が起きている。

亜熱帯熱帯で海から供給される大量の水蒸気が上昇して空気が渦を巻きできるのが熱帯低気圧で、これが最大風速17.2m/sを超えると台風となる[15]。この点で冷たい空気と暖かい空気が混ざりあおうとして空気が渦を巻きできる温帯低気圧とは構造が異なる[15]。温帯低気圧では冷たい空気と暖かい空気がぶつかりあっており前線を伴うことがあるが、台風本体は暖かい空気のみでできているため前線を伴うことがない[15]。台風の北上によって冷たい空気が流入したときには温帯低気圧に変化する(「#台風の発生から消滅」参照)。

中央に見える丸い空洞のような部分が「台風の目」である。

台風の中心付近は、風向きが乱れているために暴風が互いに打ち消し合う[16]。台風の中心付近の下降気流となっている風や雲がほとんどない区域を台風の目と呼び、勢力が大きい台風ほど明瞭に表れるが、勢力が衰えると判然としなくなることがある。

発達した台風では背の高い積乱雲が中心部を取り巻いておりアイウォールと呼ばれている[17]。構造としては、台風の目の周囲付近は中心に向かって周囲から吹き込んだ風が強い上昇気流をつくっており積乱雲が壁のように取り囲んでいる(内側降雨帯)。壁の高さは地上1000mから上空1万mに達する。そして、その外周には外側降雨帯が取り囲んでいる。また、台風本体から数百キロ程度離れた場所に先駆降雨帯が形成されることがあり、さらに、この位置に前線が停滞していると前線の活動が活発になり大雨となる。

なお、台風は一般的にその中心よりも進行方向に対して右側(南東側)のほうが風雨が強くなる。これは、台風をめがけて吹き込む風と台風本体を押し流す気流の向きが同じであるために、より強く風が吹き荒れるためである。気象学上ではこの台風の進行方向右側半分を危険半円と呼ぶ。また、台風の左側半分は吹き込む風と気流の向きが逆になるために相対的に風は弱く可航半円と呼ぶ。しかし、可航半円という概念はかつて帆船が台風の中心から遠ざかる針路をとるとき台風の進行方向左側に入っていれば右舷船尾に追い風を受けながら避航できたこと(逆に、帆船が台風の進行方向右側に入っていると右舷前側に向かい風を受けながら中心に引き込まれないよう保針しなければならなくなる)の名残であり、あくまでも右側半分と比較して風雨が弱いだけであり、可航半円の範囲といえども風雨は強いため警戒を要する。

台風の階級

台風の勢力を分かりやすく表現する目的などから、台風は「強さ」と「大きさ」によって階級が定められ分類されている[18][19]

強さによる分類は、国際的にはWMOが規定する分類法が使用されているが、それに準じた多少差異のある分類法も熱帯低気圧の等級のようにいくつか使用されていて、同じ台風でも気象機関によって異なるレベルに分類される場合がある。具体的には、米軍の合同台風警報センター (JTWC) では1分間平均の最大風速、日本の気象庁では10分間平均の最大風速によって分類する。例えば同じ台風の同時刻の観測において、米軍の合同台風警報センターが台風の強度に達したと判断しても、日本では強い台風の強度に達せず並の強さと判断する場合も生じる(1分間平均風速は10分間平均風速よりも1.2 - 1.3倍ほど大きく出る傾向にある)。また、最大風速で強さを分類しているが過去には中心気圧が用いられており、その名残りから、日本で発表される台風情報には中心気圧も網羅される。

なお、日本でもマスメディアなどにおいて用いられる「スーパー台風」の呼称については、気象庁における明確な定義は無いが[20]、米国の合同台風警報センターでは最大強度階級130 knot(約67m/s・240 km/h)以上の台風のことを指して「スーパー台風」と呼んでいるほか[21][22]、中華人民共和国(香港マカオを含む)などでは風速100 ノット (185 km/h) 以上の台風を「スーパー台風」としている。

最大風速 (m/s) 最大風速 (knot) 国際分類 日本の分類
(旧) (新)
<17.2 ≦33 Tropical Depression /トロピカル・デプレッション (TD) 弱い熱帯低気圧 熱帯低気圧
17.2 - 24.5 34 - 47 Tropical Storm /トロピカル・ストーム (TS) 台風 弱い 台風 (特になし)
24.6 - 32.6 48 - 63 Severe Tropical Storm / シビア・トロピカル・ストーム (STS) 並の強さ
32.7 - 43.7 64 - 84 Typhoon / タイフーン (TまたはTY) 強い 強い
43.7 - 54.0 85 - 104 非常に強い 非常に強い
>54.0 ≧105 猛烈な 猛烈な
JTWCによる分類
階級 最大風速 (1分間平均)
スーパー台風 130 knot (240 km/h) 以上
台風 63 - 129 knot (118 - 239 km/h)
熱帯性暴風雨 34 - 62 knot (63 - 117 km/h)
熱帯低気圧 22 - 33 knot (41 - 62 km/h)
フィリピン大気地球物理天文局 (PAGASA) による分類
階級 風速
スーパー台風 221 km/h 以上
台風 118 - 220 km/h
激しい熱帯性暴風雨 89 - 117 km/h
熱帯性暴風雨 61 - 88 km/h
熱帯低気圧 30 - 60 km/h
香港天文台マカオ地球物理気象局による分類
階級 風速
スーパー台風 100 knot (185 km/h) 以上
強い台風 81 - 99 knot (150 - 184 km/h)
台風 64 - 80 knot (118 - 149 km/h)
激しい熱帯性暴風雨 48 - 63 knot (88 - 117 km/h)
熱帯性暴風雨 34 - 47 knot (63 - 87 km/h)
熱帯低気圧 22 - 33 knot (41 - 62 km/h)
国家気象センター中国語版による分類
階級 風速
スーパー台風 51.4 m/s (185 km/h) 以上
強い台風 41.7 - 51.3 m/s (150 - 184 km/h)
台風 32.8 - 41.6 m/s (118 - 149 km/h)
激しい熱帯性暴風雨 24.5 - 32.7 m/s (88 - 117 km/h)
熱帯性暴風雨 17.5 - 24.4 m/s (63 - 87 km/h)
熱帯低気圧 17.4 m/s (62 km/h) 以下

また日本の気象庁では、大きさによる分類も行っている[23]。風速15m/s以上の強風域の大きさによって分類する。15m/s以上の半径が非対称の場合は、その平均値をとる。なお、以前は1,000ミリバール(現在使用されている単位系ではヘクトパスカルに相当)等圧線の半径で判断していた。

大きさの階級 風速15m/s以上の半径
(旧) (新)
超大型の台風 ≧ 800km
大型の台風 500 - 800km
中型 (並みの大きさ) の台風 (特になし) 300 - 500km
小型の (小さい) 台風 200 - 300km
ごく小さい台風 < 200 km

これらを組み合わせて、かつては「大型で並の強さの台風」というような言い方をしていた。しかし、組み合わせによっては「ごく小さく弱い台風」となる場合もある。1999年(平成11年)8月14日玄倉川水難事故を契機に、このような表現では、危険性を過小評価した人が被害に遭うおそれがあるという防災の観点から、気象庁は2000年(平成12年)6月1日から、「弱い」や「並の」といった表現をやめ、上記表の(新)の欄のように表現を改めた。したがって、「小型で『中型で・ごく小さく』弱い『並の強さの』台風」と呼ばれていたものは、単に「台風」、「大型で並の強さの台風」は「大型の台風」と表現されるようになった。

台風の発生から消滅

1980年から2005年までの北西太平洋上での熱帯低気圧の経路。

ほとんどの台風は北半球におけるからにかけて発生する。最盛期のコースを例にとると、発生当初は貿易風の影響で西寄りに北上しつつ、太平洋高気圧の縁に沿って移動し、転向した後は偏西風の影響で東寄りに北上し、ジェット気流の強い地域に入ると速度を速めて東進し、海水温や気温の低下に起因する中心部上昇気流勢力の低下、海上に比べ起伏が激しくまた昼夜の温度差が大きい陸への上陸によって勢力を弱めていく。ただこのような教科書的なコースを辿るものはそれほど多くなく、太平洋高気圧の影響により西進し続けたり、停滞したりと、複雑な経路をとるものもしばしば現れる。日本列島やフィリピン諸島、台湾、中国華南華中沿海部、朝鮮半島などに大きな被害を与える。コースによってはベトナムマレーシアマリアナ諸島ミクロネシアなどを通ることもある。稀ではあるが冬季にも、海水温の高い低緯度で発生する[24]。コースの北限はジェット気流であり、その流路変化に伴って暖かくなるにつれコースは北に移り、夏を過ぎると南に下がってくる。

台風の一生

台風の発生

台風やハリケーン・サイクロンなどの熱帯低気圧を発生する機構については様々な説が唱えられてきた。熱帯の強い日射により海面に生じた上昇気流によるという説、熱帯収束帯(赤道前線)上に発生するという説などが出されたが、どれも不完全であった。

現在では、「偏東風波動説」が多くの支持を集めている。南北両半球の北緯(南緯)30度付近には、赤道で上昇して北上(南下)した空気塊(潜熱を含む空気)がハドレー循環により上空に滞留してのち下降し、「亜熱帯高圧帯」が形成される。北太平洋高気圧もその例であるが、これらの高気圧から赤道方向に向けて吹き出した風はコリオリの力を受けて恒常的な東風になる。これが偏東風で、この風の流れの中にうねり(波動)ができると反時計周りの渦度が生じ、水蒸気が凝結する際に発生する潜熱がエネルギー源となり熱帯低気圧となるという考えである。なぜ波動が出来るのかはまだはっきりしないが、実際の状況には最もよく合致した説である。[要検証]

ただし、そうして発生した波動の多くは発達せずにつぶれてしまう。1万メートル以上の上層に高気圧を伴う場合には高気圧の循環による上昇気流の強化により台風に発達すると思われる。

一般に台風が発生する場合は海面の水温が26 - 27 以上であり[25]、高温の海面から蒸発する水蒸気が原動力になっている[26]。また台風の発生のうえでコリオリの力は必要であり、コリオリの力が小さい赤道付近(緯度5度くらいまで)では顕著な熱帯低気圧が発生しない[4]

台風の発達

台風の内部構造を示した図
Eye:目、Eyewall:目の壁、Rain Bands:降雨帯[27][28]

台風の発達過程はかなり詳しくわかっている。台風の原動力は凝結に伴って発生する熱である。温暖な空気と寒冷な空気の接触等による有効位置エネルギーが変換された運動エネルギーが発達のエネルギー源になっている温帯低気圧との大きな違いはここにある。

上昇気流に伴って空気中の水蒸気は凝結し、熱(潜熱)を放出する。軽くなった空気は上昇する。すると地上付近では周囲から湿った空気が中心に向かい上昇し、さらに熱を放出しエネルギーを与える。このような条件を満たすときに台風は発達する。このような対流雲の発達の仕方をシスク(CISK、第2種条件付不安定)という。

なお、台風が北半球で反時計周りの渦を巻くのは、風が中心に向かって進む際にコリオリの力を受けるためである。

2個の台風が1,000 km以内にある場合、互いに干渉し合って複雑な経路をたどることがある。これを提唱者である第五代中央気象台長の藤原咲平の名前をとって藤原の効果と呼ぶ。その動きは、相寄り型、指向型、追従型、時間待ち型、同行型、離反型の6つに分類されている。

一般に、台風は日本の南海上で発達し日本列島に接近・上陸[1]すると衰える傾向がある。これは、南海上では海水温が高く、上述した台風の発達に必要な要素が整っているためで、日本列島に近づくと海水温が26 ℃未満(真夏~初秋は日本列島付近でも26 ℃以上の場合があり、台風が衰えない場合もある)になることにより台風の発達は収束傾向になる。初夏および晩夏~秋に日本列島へ近づく台風の多くは高緯度から寒気を巻き込んで、徐々に温帯低気圧の構造へと変化し、前線が形成されるようになる。温帯低気圧化が進んだ台風は南北の温度差により運動エネルギーを得るため、海水温が25℃以下の海域を進んだり上陸してもほとんど衰えない場合がある。さらに高緯度へ進み、前線が中心部にまで達すると温帯低気圧化が完了となる。もしくは、台風内の暖気核が消滅することで温帯低気圧化することもあるが、この場合は必ずしも低気圧の中心まで前線が描かれない場合がある[29]

日本列島に上陸せず対馬海峡を通過して日本海南部に入った場合、または台風が日本列島にいったん上陸し、勢力が衰えた後に日本海南部へ出た場合は、暖流である対馬海流(海水温が26 ℃以上の場合のみ)の暖気が台風へエネルギーを供給することで再発達し、普段は台風による被害を受けにくい北海道、東北地方に甚大な被害を与える場合もある。1954年洞爺丸台風(昭和29年台風第15号)や、1991年平成3年台風第19号(りんご台風)、2004年平成16年台風第18号などがその例である。

台風の消滅

台風が海面水温の低い海域に達して水蒸気の供給が減少したり、移動する際の地表との摩擦によって台風本来のエネルギーを失うと熱帯低気圧や温帯低気圧に変化する[30]。特に台風が北上して北方の冷たい空気を巻き込み始めると温帯低気圧に構造が変化する[30]

ただし、台風から温帯低気圧への変化は低気圧の構造の変化であり、必ずしも雨量や風速が弱くなるわけではない[30]。2004年の台風18号では温帯低気圧に変化した後も中心気圧968hpa、最大風速30m/sの勢力をもち、この低気圧で北海道札幌市では最大瞬間風速50.2m/sを観測した[30]

各国への影響

日本

台風が日本本土を襲う経路は様々であり、類型化は難しいが、典型的な台風として、北緯15度付近のマリアナ諸島近海で発生して西寄りに時速20キロメートル程度で進み、次第に北寄りに進路を変えて北緯25度付近、沖縄諸島の東方で転向し、北東に向けて加速しながら日本本土に達するというパターンが考えられる。台風の経路として書籍にもしばしば掲載される型であるが、実際にはこのような典型的な経路を取るものは少なく、まれには南シナ海で発生してそのまま北東進するもの、日本の南東海上から北西進するもの、あるいは狩野川台風1958年〈昭和33年〉台風第22号)のように明確な転向点がなく北上するものなどもある。さらに、盛夏期で台風を流す上層の気流が弱く方向も定まらないような時期には、複雑な動きをする台風も見られる。

日本の気象庁の定義によれば、台風の上陸とは、台風の中心が北海道本州四国九州の海岸に達することをいう[1]。したがって、台風の中心が上記4島以外の島の海岸に至っても上陸とは言わないため、沖縄県に台風が上陸することはない。台風の中心が、小さい島や半島を横切って、短時間で再び海上に出ることは、台風の通過と呼ばれる[1]。また、ある場所への台風の接近とは、台風の中心がその場所から半径300km以内に達することである[1]

日本には、平均して、毎年11個前後の台風が接近し、そのうち3個くらいが日本本土に上陸する[31]2004年には10個の台風が上陸し、上陸数の記録を更新した(2004年の台風集中上陸参照)。その一方で1984年1986年2000年2008年2020年のように台風が全く上陸しなかった年もある。

台風接近中の台北市のスカイライン。

台風が日本本土に上陸するのは多くが7月から9月であり、年間平均上陸数は8月が最も多く、9月がこれに次ぐ。8月は、太平洋高気圧が日本付近を覆い、台風が接近しにくい状況ではあるが、台風発生数も最も多く、また高気圧の勢力には強弱の周期があるため、弱まって退いた時に台風が日本に接近・上陸することが多い。無論、西に進んでフィリピン・台湾・中国に上陸したり朝鮮半島方面に進んだりするものも少なくない。6月や10月にも数年に1度程度上陸することがある。最も早い例では1956年4月25日台風3号が鹿児島県に上陸したことがあり[32]、最も遅いものとしては、1990年11月30日に台風28号が紀伊半島に上陸した例がある[32]

フィリピン

フィリピンでは毎年6月から12月にかけてに台風が襲来するリスクが高くなる[33]。フィリピンでは年平均で約20個の台風が領域内で発生するか領海内に進んできており、うち6~9個の台風が上陸している[33]。フィリピンでは2004年から2014年にかけての11年間に88の台風の影響を受け、合計死者数18,015人、合計負傷者43,840人、合計経済損害額13,700百万アメリカ合衆国ドル|USドルの被害が発生した[33]

台風の観測と進路予測

台風の観測

NOAAの観測機から撮影されたハリケーン・カトリーナの中心部

アメリカでは、1943年テキサス州ヒューストンを襲ったサプライズ・ハリケーン英語版の際に敢行された直接観測をきっかけとして、アメリカ軍が航空機により台風を直接観測するため、ハリケーン・ハンターと呼ばれる専門部隊を編成した。当初はアメリカ空軍アメリカ海軍が個別に観測していたが、1993年からはアメリカ海洋大気庁 (NOAA) のNOAA ハリケーン・ハンターズ英語版に移管され、NOAA士官部隊が運用する観測機で直接観測を継続している。

日本の気象庁は緯度では赤道から北緯60度、経度では東経100度から180度までの範囲にある台風の位置決定と予報を担当する[3]

現在、台風の観測では気象衛星ひまわりが重要な役割を果たしており、雲画像の連続的な解析により台風の中心や風速などの観測がなされる。日本付近に接近あるいは上陸した台風については気象レーダーやアメダスも利用される。

2017年からは名古屋大学琉球大学などの研究グループが航空機からドロップゾンデを投下、観測ドローンなどで直接観測を実施している。同研究グループは2017年10月21日、日本人研究者として初めて台風の中心付近を飛行機で直接観測することに成功した[34][35]。得られたデータを衛星やレーダーからのデータと合わせることで予報精度の向上を目指している[36]

台風の進路予報表示

台風の進路予報表示では、平均風速が15m/s以上の強風域を黄色の円、同じく25m/s以上の暴風域を赤色の円で表す。12、24、48、72、96および120時間後の到達予想範囲は点線の予報円で記す。台風の進路が予報円の中に入る確率はおおよそ70%である。また、台風の中心が予報円の中を通った場合、暴風域に入る恐れがある範囲を赤い線で囲む。これを暴風警戒域という。

台風の進路予報表示は1953年(昭和28年)6月から1982年(昭和57年)5月まで扇形方式、1986年(昭和61年)5月まで予報円方式が用いられ、1986年(昭和61年)6月以降は現行の予報円・暴風警戒域方式が用いられている。また、予報期間は2002年(平成14年)6月から[注 3]2009年(平成21年)3月は72時間先まで、2009年(平成21年)4月から120時間先まで発表されるようになっている[37]。さらに、2020年(令和2年)9月9日からは、24時間以内に台風に発達する見込みの熱帯低気圧についても120時間先までの予報が出されている[38]

台風の影響

台風による被害

伊勢湾台風による愛知県半田市における被害の様子
2013年の台風30号通過後のタクロバン市街(フィリピン)

台風が上陸あるいは接近すると、暴風(強風)による人工物や樹木の倒壊、高潮・高波や大雨による水害洪水浸水のほか、土砂崩れ・地すべりなどの被害が発生する。

  • 渦性降雨 - 台風の中心付近では激しい雨となる。
  • 地形性降雨 - 台風により山地に向かって気流を生じるような地形では大雨となりやすい。
  • 前線の発達 - 台風の接近により時期によっては

    台風により暴風・強風を生じる。海岸近くでは吹き付けられた海水による塩害を生じることがあり、送電線の碍子(がいし)で放電現象を伴うこともある。

    台風により高波やうねりを生じる。波の高さが10mを超えることもある。強風による吹き寄せと気圧低下によって高潮を生じることがある。珊瑚礁のある海岸など地形によっては波群津波が発生することもある。

    雲が発達する割には台風本体接近時にはを伴うことは少ない。しかし台風による間接的な雷雨が発生することがある。台風本体においては、進行方向の左側で比較的発生しやすい[39]

    その他

    • 竜巻 - 関連性は解明されていないが、台風の接近による竜巻も発生することがある。
    • - 熱帯低気圧であるため台風である時期にはは降らないが、温帯低気圧に変化した後に高緯度地区で降雪となることや、冬型気圧配置となることによる降雪となることがある。稀に1932年晩秋に上陸した七五三台風や1990年の晩秋に上陸した台風28号のように、台風接近時に山間部の集落で大雪が降ったケースもある。

    台風が日本海側を通った時、接近時の日本海側や、台風が太平洋側を通った時の離れていく時の太平洋側で、台風によるフェーン現象が発生しやすく(特に前者)乾燥した熱風による火災や急激な気温上昇による雪崩なども起こりやすい。

    なお、台風が過ぎ去った後、台風が通過した地域では空が晴れ渡って良い天気になることがあり、これを「台風一過(たいふういっか)」と呼ぶ[40]。( ウィクショナリーには、台風一過の項目があります。)

    日本における台風の被害は、記録が明確な20世紀中盤以降、確実に減少してきている。これには、学術面では台風研究の発展、行政では予報の充実や経験等をもとにした防災体制の構築、民間では災害記録の伝承や自主防災活動による効果と考えられる。上陸時勢力が日本史上稀に見る強さであった伊勢湾台風以降、災害対策基本法制定をはじめ、伊勢湾台風クラスあるいは「スーパー伊勢湾台風」クラスの台風に耐えられるような防災体制が目標とされてきた[41][42]。しかし、現在においても大きな被害が出て、さらなる防災の強化が行われている地域もある。また、日本の周辺諸国、特に東南アジアでは防災体制やインフラ等がまだ成熟していないため、地すべりや洪水等により多数の死者を伴う甚大な被害が発生することがある。

    雨台風・風台風

    雨台風であったカスリーン台風は、関東を中心に豪雨による甚大な浸水被害をもたらした。 風台風であった洞爺丸台風は、記録的暴風や高波により洞爺丸を沈没させた。
    雨台風であったカスリーン台風は、関東を中心に豪雨による甚大な浸水被害をもたらした。
    風台風であった洞爺丸台風は、記録的暴風や高波により洞爺丸を沈没させた。

    風による被害は比較的小さい一方で、雨による被害が大きい台風を雨台風と呼ぶ[43][44][45]。一般的に、梅雨期に接近上陸する台風や秋雨前線の活動が活発な秋季の台風は、風よりも雨による被害が大きい[43]。過去の代表的な雨台風の例としては、1947年のカスリーン台風や1958年の狩野川台風などが挙げられる[43][46]。反対に、雨による被害は比較的小さい一方で、風による被害が大きい台風を風台風と呼び[47][44][45]、過去の代表的な風台風の例としては、1954年の洞爺丸台風や1991年の平成3年台風第19号、2004年の平成16年台風第18号などが挙げられる[48]。しかし、これらはいずれも気象庁が定めた俗称であり[44]、あくまで便宜的な区別であるため厳密な定義はない[47][43]。なお、台風そのものに「雨が強い」「風が強い」などの性質があるわけではなく、台風によって引き起こされた災害の結果によって、これらの言葉が使用されているだけである[49]

    勢力が強い台風の場合は、雨と風の両方で甚大な被害が出ることも少なくない。平成18年台風第13号(2006年)では、九州付近の前線の活発化で、梅雨末期のような集中豪雨を呈した。佐賀県伊万里市では期間降水量の7割が上陸前日に降る集中豪雨となった。

    台風による社会的な影響

    • 交通機関の乱れ
      • 特に航空フェリー航路の場合、暴風を伴うと大変危険なこと、また機体や使用船舶の遣り繰りがつかない(目的地や避難先が台風の進路上で運航できない)事等から台風が通過した後も運休するケースが多い。
      • 国内航空に関しては一日の機体の遣り繰りが複雑で一つの機体が5、6便運航することが多く、台風の関係ない地方でもどこかの路線で台風による欠航が発生することにより後続の機材繰りによって、使用する航空機が出発までに用意できずに欠航や遅延することもある。
      • また鉄道バス自動車道路高速道路国道など)も一定の風速または雨量をオーバーすると運休や通行止め、あるいは速度徐行がなされる場合もある。近年鉄道においては影響が予想される場合はあらかじめ長距離列車の運休や間引き運転・全列車の各駅停車運転などが行われ、事前事後のダイヤの混乱防止と輸送手段の確保の両立を図るケースが多い。(「計画運休」参照)
    • 公衆施設(自治体の公共施設・サービス受付、レジャー施設、百貨店スーパーマーケットなど)の営業休止・または早期打ち切り
    • スポーツ試合やコンサート、イベントの中止・延期
    • 屋内施設(ドーム球場体育館、コンサートホールなど)で開かれるイベントであっても、交通機関のマヒによる関係者の現地入り不能や、観客の安全などを考慮してイベントを中止する事例がある(プロ野球でのドーム球場の中止事例はドーム球場#ドーム球場での試合中止事例参照)。
    • 被害という視点で語られることの多い台風も、日本では梅雨以後の夏期における、各地のダムや山間部の川の水資源確保の観点から見れば、定期的な台風の襲来は重要である。例えば、平成17年台風第14号(2005年)や平成19年台風第4号(2007年)は大きな被害(ともに激甚災害)を生んだが、台風襲来前は渇水によって0%となっていた早明浦ダムの貯水率をたった一晩で一気に100%以上にまで回復させたため、取水制限が解除された。つまり「台風が来なければよい」と一概には言えない。

      台風と地球温暖化

      気候変動に関する政府間パネルの第5次評価報告書でも示されているように、台風の大型化と地球温暖化は関係があるとする見方が強い。実際2004年には例年の3.8倍の数の台風が日本に上陸し、平成27年9月関東・東北豪雨令和元年東日本台風は日本各地に甚大な被害をもたらした。地球温暖化は海洋、大気両方に影響を与える。前者において海水温上昇による海水の蒸発量の増加に伴い大気中の水蒸気が増加し、上昇気流が起きやすくなる。これによって発生した台風は大型化しやすくなる。後者においては対流圏気温減率が小さくなり大気は安定する。このため台風ができにくくなり数は減少する。地球温暖化は台風に相反する2種の影響を与える。[50][51]

      台風と生物学的自然

      台風は災害ではあるが、定期的に襲来するものであり、それなりに地域の自然の中で位置づけを持つものでもある。たとえば沖縄では台風の降水は地域住民にとっては水確保の上で重要な意味を持つ。同様に、沖縄における森林物質循環を考える場合、落葉量に関しては、台風時のそれを無視することが出来ない。

      また、台風に乗って移動する動物もある。定着している分布域ではないところに見つかるチョウ迷蝶というが、日本では熱帯域の種が本土で見つかる例があり、往々にして台風の後である。たとえばメスアカムラサキカバマダラなどが、このようにして出現し、冬までに世代を重ねる例が知られる。それらは冬を越せない死滅回遊の例でもある。ウスバキトンボなどもこの例である。同様に、沖縄以南で繁殖し、本州付近ではまれにしか観察されない野鳥迷鳥として台風の後に観察されることがある。

      また、台風が太平洋上の生物を日本沿岸に吹き寄せる例もある。台風通過後に砂浜にそれらが打ち上げられる場合があり、カツオノエボシカツオノカンムリなどのクラゲ類、アサガオガイルリガイ、あるいはササノツユマルカメガイなどの翼足類などが見られることがあり、貝類採集家などがこれを狙う。

台風の制御・利用の試み

日本では、台風の目に航空機からや水、人工降雨を促すヨウ化銀を散布して熱を奪い、勢力を弱める研究「タイフーンショット」が始まっている(「ムーンショット」にちなんだ命名)。また無人の帆船に台風を自動追尾させて発電に利用する構想もある[52]

過去の記録的な台風

日本

1930年代以前
室戸台風通過後の四天王寺の様子 室戸台風通過後の四天王寺の様子
室戸台風通過後の四天王寺の様子
  • 永祚の風:989年9月(永祚元年8月)近畿地方。「夜、天下に大風。皇居の門・高楼・寝殿・回廊及び諸々の役所、建物、塀、庶民の住宅、神社仏閣まで皆倒れて一軒も立つもの無く、木は抜け山は禿ぐ。又洪水高潮有り、畿内の海岸・河岸・人・畑・家畜・田この為皆没し、死亡損害、天下の大災、古今にならぶる無し、云々」(『扶桑略記』、原文は漢文)
  • 弘安の役台風:1281年8月(弘安4年閏7月)西日本。弘安の役元寇)で日本に来襲した高麗連合軍14万人のうち約10万人溺死。(これが後に神風として言い継がれることとなる。)
  • シーボルト台風
  • 安政3年の大風災:1856年9月23日(安政3年8月25日)から24日にかけての夜間に関東地方を襲った。伊豆半島付近から江戸のすぐ北を通過したと考えられる。猛烈な暴風と高潮で江戸をはじめ関東の広い範囲に大被害が起き、『近世史略』は死者10万人余りとしている。
  • 東京湾台風(1917年10月1日):フィリピン東方から北東に進んで10月1日未明に東京北方を通過した台風で、東京湾に高潮発生、死傷者およそ3,000人[53]、全半壊流失家屋6万戸。東京で記録した952.4ヘクトパスカルの最低気圧記録は2019年10月現在も破られていない。
  • 1921年9月26日の台風:本州南方をゆっくり東進していた台風が急に北上し、不意打ちの形で紀伊半島から日本を縦断。そのため警報発表が遅れ、富山県下で漁船の遭難多数。当時の伏木測候所長が世間の糾弾のため自殺した事件で知られる台風。ただし、測候所長の自殺の裏には気象観測施設に関する県と国のいさかいがあったようである。
  • 新高台風(にいたかたいふう、1922年8月26日):8月24日関東地方を通過した台風が北上して26日にはカムチャツカ半島付近に達し、その近海にいた日本帝国海軍の巡洋艦新高が沈没した。高緯度であったので、事故発生時には台風は温帯低気圧に変わっていた可能性もある。初めて固有名(ただし非公式)が付いた台風。
1940年代
1950年代
ジェーン台風による高潮で浸水した大阪市街 1953年の台風13号の際に風で落下した広告塔
ジェーン台風による高潮で浸水した大阪市街
1953年の台風13号の際に風で落下した広告塔
伊勢湾台風の被災地を取材するCBCのテレビニュース班
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
2010年代
2018年の台風21号により被災した建物 令和元年東日本台風により破堤が起きた千曲川
2018年の台風21号により被災した建物
令和元年東日本台風により破堤が起きた千曲川

台風の名前

台風は、日本では「台風第○号」「台風○号」のように台風番号で呼称されることが多いが、それぞれの台風には、国際的に使用される固有名が付けられている。これを国際名という(2000年以降はアジア各国が提案した名前が付けられているためアジア名ともいう)。

台風の統計

特殊な台風

複雑な動きをする台風

複雑な進路を辿り、時に進路予報が難しいことのある台風のこと。「迷走台風」とも呼ばれるが、気象庁ではこの用語は用いられない[59]

長寿台風

台風に発達してから熱帯低気圧温帯低気圧に変わるまでの期間が長い台風のこと[60]対義語は「短命台風」。前述の「複雑な動きをする台風」が「長寿台風」になることが多い。

越境台風

太平洋のうち、日本の気象庁が観測対象とする範囲 (太平洋北西部・南シナ海) 以外で、ハリケーンサイクロンなどとして発生したものが、観測範囲の境界線を越えて「台風」と分類されるようになった熱帯低気圧のこと。

復活台風

1回以上勢力が衰え、最大風速が17.2m/s (33.5 kt) 以下の熱帯低気圧となってから、再び発達し最大風速が17.2m/s以上になって、「台風」になった熱帯低気圧のこと。

越年台風

「年越し台風」とも呼ばれ、その名の通り年を跨いで発生する台風。基本的に12月に発生し翌年の1月に消滅する。このような台風の出現は非常に珍しく、過去(1951年以降)に5件しか例がない[61][62]。越年台風の1つである2000年の平成12年台風第23号は、20世紀21世紀を跨いだ、(観測記録が残る範囲で)過去唯一の「世紀越し台風」でもあった[63]

越年台風一覧(UTC基準)[61][62]
台風 国際名 発生日時(UTC) 消滅日時(UTC)
昭和27年台風第27号 Hester 1952年12月28日 0時 1953年1月5日 12時
昭和34年台風第23号 Harriet 1959年12月24日 0時 1960年1月2日 12時
昭和52年台風第21号 Mary 1977年12月21日 9時 1978年1月2日 18時
昭和61年台風第29号 Norris 1986年12月23日 0時 1987年1月2日 0時
平成12年台風第23号 Soulik 2000年12月30日 0時 2001年1月4日 18時

台風の将来予測

地球温暖化が進んだ将来、発生する台風の勢力は現在よりも強くなり、いわゆる「スーパー台風」と呼ばれるような強力な台風の発生が増加し、それによる日本への影響なども含めて増加するであろうと懸念されている。しかしその一方で、台風の発生数は温暖化により現在よりも少なくなるともいわれている。

脚注

[
  1. ^ ただし、サイクロンは、温帯低気圧を含めた全ての低気圧を意味することもある[要出典]
  2. ^ ハリケーンは台風やサイクロンよりも風速の基準が高い。なお、この区域で最大風速が17.2m/s以上32.7m/s未満のものをトロピカルストームと呼ぶ。
  3. ^ 船舶向けは1997年(平成9年)7月から
  4. ^ 値が空白となっている月は、平年値を求める統計期間内に該当する台風が1例もなかったことを示している。
  5. ^ 接近は2か月に跨る場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない。
  6. ^ 括弧内は1970年 - 2000年の平均値
  7. ^ 「本土」は本州、北海道、九州、四国のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を指す。
  8. ^ 「沖縄・奄美」は沖縄地方、奄美地方のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を指す。
  9. ^ 地方の区分については、気象庁のサイトを参照。
  10. ^ 「九州北部地方」は山口県を含み、「中国地方」は山口県を含まない。
  11. ^ 「関東地方」は伊豆諸島および小笠原諸島を含まない。

出典

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  11. ^ また、柳田国男は、古代語「わき」におそろしい強風という意味が含まれていなかったかと指摘している。参照:山本健吉『基本季語五〇〇選』(講談社学術文庫、1989年)600-601頁。
  12. ^ 高橋 1976, pp. 155-156.
  13. ^ 『[[世界大百科事典』]』平凡社 1998年
  14. ^ 肥沼寛一. “台風の古い日本名”. 日本気象学会. 2020年11月3日閲覧。
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  16. ^ 中心付近は遠心力が強く、中心へ収束しようとする暴風と打ち消し合う。
  17. ^ 台風の仕組み 日本気象協会
  18. ^ 気圧配置 台風に関する用語 気象庁(2021年9月20日閲覧)
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  24. ^ 例えばユーラシア大陸からの冷たい寒気が対馬暖流の上を移動する事で、下層と上層の温度差が極地方の海上並みに非常に大きくなる等して発生し得る。
  25. ^ 小倉 2016, p. 232.
  26. ^ 田中 2017, p. 279.
  27. ^ rain band=降雨帯”. 科学技術振興機構. 2009年10月7日閲覧。
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  50. ^ 竹見哲也「地球温暖化と台風災害」『農業および園芸=Agriculture and horticulture』92巻・3号、2017年、pp.197-198
  51. ^ 村本貢司『台風学入門』2006年
  52. ^ 凶暴台風 制御に挑む「目」に水まき弱体化/発電に利用の構想も朝日新聞』朝刊2021年9月10日(教育・科学面)2021年9月20日閲覧
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参考文献

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  • 小倉義光『一般気象学』東京大学出版会、2016年、第2版補訂版。ISBN 978-4-13-062725-2
  • 田中博『地球大気の科学』共立出版、2017年。

関連項目