日本の旗 日本
天皇
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在位
Emperor Naruhito (may 2019).jpg
第126代天皇
徳仁

2019年令和元年)5月1日より
詳細
敬称 天皇陛下
第一順位継承者 秋篠宮文仁親王皇嗣
初代 神武天皇[1][注釈 1]
成立 神武天皇即位元年1月1日
西暦紀元前660年2月11日[1][注釈 2]
宮殿 〈公務〉
皇居 宮殿
東京都千代田区
〈住居〉
赤坂御用地 赤坂御所
(東京都港区
ウェブサイト 宮内庁
称号: 天皇
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敬称 陛下
His Majesty the Emperor
または
His Imperial Majesty (H.I.M.)
皇室
Imperial Seal of Japan.svg

天皇 徳仁
皇后 雅子






天皇(てんのう、: emperor[4])は、日本国憲法に規定された日本国および日本国民統合の象徴たる地位、または当該地位にある個人[5][6][7]7世紀頃に大王が用いた称号に始まり、歴史的な権能の変遷を経て現在に至っている[7]

2019年令和元年)5月1日より在位中の天皇は徳仁上皇明仁第1皇男子)。

皇位の象徴である高御座

概要

公務を行う天皇明仁(在位当時)
徳仁の即位を祝う一般参賀、宮殿長和殿(2019年5月4日)
一般参賀に出席する天皇徳仁、皇后雅子秋篠宮文仁親王(2019年5月4日)

「てんのう」は、「てんおう」の連声(れんじょう)とされる[8][9]。古代の日本では、ヤマト王権の首長を「大王」(オオキミ)といったが、天武朝ごろから中央集権国家の君主として「天皇」が用いられるようになった[9]。「天皇」は大和朝廷時代の大王が用いた称号であり、奈良時代から平安時代にかけて政治祭祀の頂点だったが、摂関政治院政武家の台頭により政治的実権を失っていった[8]室町時代には多くの宮中祭祀の廃絶もあり劣位となったが、「江戸時代末に尊王論が盛んとなり、王政復古明治憲法における天皇制へとつながった」といわれる[8]

明治憲法上は、天皇は神聖不可侵であること(第3条)、国の元首であり、統治権を総攬すること(第4条[注釈 3]が規定されていた[5][8][9]

百瀬孝は、「神聖不可侵」とは、天皇の神格化のことではなく、不敬行為を許さぬこと、政治上の責任を負わないこと(天皇無答責)、一般に国法の適応(特に刑事上の責任)を負わないこと、皇位を廃することは不可能であることという4つの法律的内容を持つとし、神聖不可侵性は君主が持つ本来的な性格であり、日本特有のものではなく、国際法上元首には神聖不可侵性が現在でも保証さるべきものとされていると主張する[11]。一方、新田均は「現人神」「唯一神」「唯一天皇」「総」「絶対至尊」といった類の呼称もされ、こうした天皇を全世界・全宇宙頂点とする価値観は「八紘一宇」「天皇総帝論」「唯一の思想的原動力」「国家社会主義」「純なる日本的世界観」「大和民族の宿」「惟神(かんながら)的世界観」とのように呼称されていたと主張する[12]。(詳細は天皇#一神教・国家神道を参照。)

戦前には「皇帝」と「天皇」が併用されていたが、1936年(昭和11年)には「天皇」で統一された[5]

戦後の日本国憲法においては「日本国および日本国民統合の象徴」と規定された。天皇は憲法が限定的に列挙している国事行為のみを行い、国政に関する権能は一切ない(第4条第6条 - 第7条[13]。国事行為は国家意思形成に関わらない形式的・儀礼行為であり、天皇が国事行為を行うには常に内閣の助言承認が必要であって、内閣は自らの助言と承認に責任を負う(第3条[13]。天皇は国事行為の責任を負わないが、民事責任は負っている[13]。天皇の刑事責任を免責する明文規定は無いが、摂政はその在任中は訴追されないと定める皇室典範21条から、天皇もその在位中は訴追されないとの類推がある[13]

明治憲法においては天皇を元首とする明記があったが、現行の日本国憲法には元首の規定はなく、そのため日本の元首について様々な見解がある[14]。象徴天皇を元首とする説、実質的機能を重視し内閣(または内閣総理大臣)を元首とする説、元首は不在とする説等がある[15]。条約締結や外交使節任免および外交関係処理の権限をもつ内閣を元首とするか、内閣を代表する内閣総理大臣を元首とする学説が多い[16]。内閣法制局は「日本国憲法においては天皇を元首であるといっても差し支えない」「天皇は限定された意味で、国家元首である」とする一方、最終的には定義によるとしている。国際慣行上は天皇が元首として扱われている[17][18]

日本国憲法下の天皇が君主に該当するかどうかについても議論がある。君主とは伝統的に、国家で特定の一人が主権を持つ場合のその主権者であり[19]帝王天子・皇帝・きみなどとも言われる[20]。『日本大百科全書』は、天皇は通常の立憲君主の権限は無いとし、『法律用語辞典(第4版)』は、象徴天皇と元首天皇を別としている[21]。また『国史大辞典』は法制上、象徴天皇は君主ではないとしている[22]。一方佐々木弘道は、象徴天皇制をイギリス立憲君主制に比して、君主権力がよりいっそう消極的な、日本独特の君主制とする[23]佐藤功は「国民主権下の君主制」と呼ぶのが適当であろうとしている[24]清宮四郎イギリスの君主に比べて権限が制約されているものの、歴史的に見て君主と言ってもあえて誤りというほどのものではないとしている[24]内閣法制局の見解では「日本は共和制ではないことはまず明らか」「立憲君主制と言っても差しつかえないが、明治憲法下における統治権の総攬者としての天皇をいただくという意味での立憲君主制ではない」としている[24]

天皇は日本国憲法第10条に規定された日本国籍を有する「日本国民」であるが、一方で日本国憲法第1条にある「主権の存する日本国民」ではない[25][26]。『世界大百科事典』によれば日本国憲法によって主権者国民となり、「天皇は主権者の一員でもない」とされている[13]。「象徴規定にはとくに法的意味はなく、また国民を統合する機能は憲法上天皇には期待されていない」という[13]。天皇へ認可された権能は極めて限定されており、「行政権ももたず国を対外的に代表することもない天皇を君主とか元首とみることは困難」とされる[13]。天皇の地位は主権者である国民の総意に基づいており(第1条)、「国民の総意によって天皇制度を改廃することが可能」となっている[13]。「神勅主義は明確に否定されているので、神秘的・宗教要素がここに介入する余地は皆無」であり、天皇は的な宗教的活動が禁止されている(第20条)こともあって、「天皇、国家の世俗化が要求されている」[13]。「神道が特別な地位を与えられることはもはや許されない」のであり、皇位継承の際に行われた大嘗祭三種の神器の継承は、「天皇家の私事としてのみありうる」とされる[13]

天皇制

『岩波 日本史辞典』によると「天皇制」は、日本君主制を指す[27]。「広義には前近代天皇制と象徴天皇制を含め、狭義には明治維新から第二次世界大戦敗戦までの近代天皇制を指す」語であり[27]、「象徴天皇制は天皇が元首でないので君主制としない説もある」とされている[28]。「君主制(王制)」について、『日本大百科全書(ニッポニカ)』は「一般には、世襲の君主が、ある政治共同体において最高権力(主権)をもつ政治形態」としている[29]

「天皇制」という項目を掲載している学術資料は、Kotobankに登録されている辞事典としては『デジタル大辞泉』、『大辞林』(第三版)、『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』、『百科事典マイペディア』、『世界大百科事典』(第2版)、『日本大百科全書(ニッポニカ)』がある[30]。2017時点で「天皇制」を使用している研究論文は、Google Scholarグーグル・スカラーでは約15,700件[31]CiNii Articlesでは6156件がある[32]

語源

古くは「スメラミコト」「スメロキ」「スベラギ」等と呼んだ[33]。元は皇帝天子[33]・君主の敬称であり、古代中国最高神神格化された北極星(天皇大帝)を指す語[34]である。

道教の神話では、3~4世紀の道家葛洪が『元始上真衆仙記』に太元母が13人の天皇を産んだと記しており、同じく13世紀の道家・謝守灝は『混元聖紀』に天地開闢の時に12人の天皇氏があったと記している。11世紀の欧陽脩が書いた『新唐書』「本紀第四 則天皇后 中宗」によれば、674年にの第3代皇帝高宗天皇と号したとしている[35]。他方で、7世紀中頃以降で、中国語天皇・地皇・人皇の一つに由来しており、スメラミコトの漢語表現である[36]とする説もある(この世紀に「天皇」の文字が初めて文献に現れたとする事典[37]もある)。

天皇という二字は、「是全ク漢土ノ制ニ傚ヘル故ニ、今目シテ漢風諡ト云フ(これは全く漢の国の制度に倣っているため、今日に見れば漢風諡と言う)」とされる[38]。また、ある分野で強大な権力を持つ人を指す[8][9]。なお、天皇てんこう三皇の一種である他に、天帝天子も意味し天皇てんのうに通じる他[8][9]皇天こうてん天皇皇室天の神上帝・天帝などを意味する[39]

地位

憲法の規定

日本国憲法における天皇

日本国憲法では、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」(第1条)、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」(第4条)と規定されている(象徴天皇制)。なお天皇を元首や君主とする規定は存在しない。

国籍・日本国民

天皇も日本国憲法第10条に規定された日本国籍を有する「日本国民」である[40][41]。研究者による憲法論においては、天皇が「主権者としての国民」「人権享有主体としての国民」に該当するか否かが論じられており、憲法論の皇統譜についての箇に「日本国籍を有するものでも戸籍に記載されない唯一の例外に天皇および皇族がある」という記載がある[42]記帳所事件における1989年(平成元年)7月19日の東京高裁判決では「天皇といえども日本国籍を有する自然人の一人であって」と判断されている。

裁判権

刑事裁判権については、皇室典範第21条が「摂政は、その在任中、訴追されない」と規定することから、いわゆる勿論解釈として、天皇については当然に刑事裁判権が及ばないものと解されている。

民事裁判権については、1989年(平成元年)11月20日の記帳所事件における最高裁判決で

天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。したがって、訴状において天皇を被告とする訴えについては、その訴状を却下すべきものである

としている。

大日本帝国憲法における天皇

大日本帝国憲法では、天皇は「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」(第1条)、「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リテ之ヲ行フ」(第4条)と規定され(元首かつ君主)、憲法解釈として憲法を絶対主義的に解釈する天皇主権説立憲主義的に解釈する天皇機関説の争いがあった。

天皇についての学術的言説