職業(しょくぎょう、英: 主にoccupation、他にprofessionやvocationなど[1][注 1])は、生計を維持するために、人が日々従事する仕事[2][3]。社会的分業の成立している社会において生活を営む人々が、それにつくことによって、その才能と境遇に応じた社会的役割を分担し、これを継続的に遂行し実現しつつ、その代償として収入を得て生活に必要な品々を獲得する、継続的な活動様式[1]。
ひとが職業を持つ目的のひとつは、生計を立てること、つまり生活するのに必要な(衣食住などの)物資やサービスを得るため、現代であれば主としてそれを得るために必要な金銭を得るためになされている。被雇用者の場合は、主としてそれを給与の形で、個人事業主(自営業)の場合は、収益から必要経費類を差し引いた利益 の形で得ている。(ただし、農業や漁業を行っている人の場合は、自身が収穫した農産物や海産物が、そのまま自身や家族の食料となる部分もあり、必ずしも生計のすべてが貨幣経済の制度に組み込まれてしか成り立たないとは限らない。)[注 5]
人間の社会の中では、まず食料の収集、栽培、収穫に携わる、狩猟、農業、漁業といった第一次産業が職業として誕生し、そして食品の加工から、その運搬、交換として経済活動に関係した職業が始まり、工場制手工業などの産業革命により、工場労働、労働管理といった新たな職業(第二次産業)が近代の職業を彩った。
職業は生活を支えているだけではなく、それに従事する各人の精神的な支えともなっている事が多い。それは、職業上高い地位を得た者だけが享受しているのではない。職業に従事できている、経済的に自立している、という事自体が、無意識的ではあるものの個人の尊厳を支えている面があるのである。このため、職業を失ってしまうこと(失業)は、経済的な面だけでなく、精神的な面にも悪影響を及ぼし、うつ病や自殺の要因・誘因となる事も稀ではない。
そのため、政府は、経済的な観点からだけでなく、国民の(心の)健康の維持のためにも、失業率を低く抑えるようにつとめるべきだということは言われている[注 6]。
人が職業を得る道筋はさまざまである。 家業をつぐことで職業を得る場合もあるし、同族経営に参加することで職業を得る場合もあるし、誰かに雇われること(被雇用者となること)で職業を得る場合もあるし、自分で起業することで職業を得る場合もある。
アメリカでは優秀な人々は、誰かに雇われることを良しとせず、学生の段階で小さなビジネスを起業し、それを成長させ法人化し、その会社の経営者となってゆく、というパターンも増えている。その場合、経営者であること、がその人の職業である。
次に親などが家業や家族経営を持ったり行っている場合を説明すると、これもいくつかのパターンがある。一族が家業を持っている場合は自然な流れで、家業の場で一種の「修行」のような形で、家業の訓練、職業の訓練を行うことになり、そうして職業を得てゆくことになる。また親や祖父母などが家族経営、同族経営などでビジネスを行っている場合も、多くの場合、(いくつか経路はあるが)そのビジネスの経営者の一陣の中に加わってゆく形で、つまり経営者という職業を得てゆくことになる。
特に家業もなく、親が家族経営・同族経営をしておらず、当人が学生時代に起業もしない場合は、職業を得たい場合は就職活動を行う必要がある。
就職活動のありかたは、世界の国々によってかなり異なっている。フランスでは学生をしつつ企業でインターンをするのが当たり前と見なされていて、インターンをしなければ就職もできない。ドイツなどでは、かなり若いころに2つの経路のうちどちらを選ばせる。すなわち若いうちから職能を身に付ける、つまり「職人」的な道へと進むか、それとも、大学などの高等教育を受ける道を進むか、どちらをとるかしっかり選ばせるシステムになっており、職人的な道のほうは、一週間を曜日で分けて、働きつつ教育も受けるという、デュアルシステムを特徴としている。
日本の就職活動の状況は、就職率などを見ると、世界的に見てかなり特殊な状況である。なお最初の就職活動の機会は中学校在学中である。続いて高等学校在学中、それに続いて短大、高専、専門学校、大学在学中、それに続いて大学院在学中などが主な機会である。
好景気期には、いわゆる「売り手市場」となり就職は比較的容易になる傾向があり、不景気期にはいわゆる「買い手市場」となるため就職が困難になる傾向がある。
なお、小学生などの段階ですでに芸能事務所に所属し、たとえば俳優(子役)の仕事を継続的に得ていてそれなりに収入を得ている人は、小学生の段階ですでに職業を得ていることになる。
ワーク・ライフ・バランスとは日本語では「仕事と生活の調和」とも表現されるものである。職業人としての時間と、家庭人(あるいはひとりの人間)としての時間のバランスのことである。
一部の例外を除いて、ほとんどの職業(仕事)には何らかのストレスがつきまとっている。適度なストレスはそれを克服しようとする個人の人間力や能力の拡大を促すきっかけとなるが、過度のストレスは体調・健康に悪影響が出る。ストレス対策には、「気持ちの切り替え」をうまく行なったり「心のゆとり」を持つことが有効である。過剰な残業や休日出勤は精神疾患の温床となることは指摘されている(起きている時間のほとんどすべてが職業のための時間となると、ストレスが大きくなりすぎるのである)。職場を離れた場で、友人と本音で話しあったり、家族と気持ちを通わせたり、気分のリフレッシュにつながる趣味の時間を持つことは、人が健康でいるためには必要であることは言われるようになり、過度な残業・休日出勤をさせ従業員の健康を害した企業は賠償請求をされるケースも出てきている。そのため残業・休日出勤を減らす工夫をする企業も次第に増えてきている。