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三代歌川広重作『横浜海岸鉄道蒸気車之図』

日本の鉄道(にほんのてつどう)では、日本国内における広義の鉄道について述べる。

概説

日本における鉄道とは、狭義には鉄道事業法に基づいた国土交通省鉄道局の管轄のもとにあるものを指す。軌道法に基づいて建設されたものは法的には軌道と呼ばれ、鉄道とは異なるものであるが、一般的にはこれも鉄道と呼ばれる。鉄道事業法と軌道法の2種類があるのは、軌道法が主に道路に敷設される鉄道を対象としているからである。また、鉄道事業法は旧運輸省、軌道法は旧運輸省と旧建設省の共同管轄と、管轄する省庁も異なっていた。運輸省と建設省は2001年平成13年)に統合され、国土交通省となっている。

鉄道事業法や軌道法以外の法規の適用をうける鉄道もある。森林鉄道鉱山鉄道、かつて存在した簡易軌道(←殖民軌道)がこれにあたる。

これらとは別に、一部私有地において、鉄道事業法や軌道法に基づかず建設された鉄道も存在する。旅館などの送迎などに使われるもののほか、小規模なトロッコ遊園地の「おとぎ汽車」のような園内遊覧鉄道(遊具)がこれにあたる。

日本は、比較的人口密度が高く、都市内輸送、都市間輸送において鉄道が重要な役割を担っているため、日本の鉄道の旅客輸送人員は、世界全体の4割のシェアを占めるまでになっている。また定時運行性については、世界で最も優れた水準に達している。

しかしながら、鉄道インフラへの公的支援が弱く、貧弱なインフラで大量の旅客輸送を行う“詰め込み輸送”を前提としているため、他の先進国の鉄道と比べ接客サービスの水準は高いとは言えず、ごく一部の大手私鉄を除き事業者の経営は脆弱である。また輸送密度の低い過疎地域においては、人口減少モータリゼーションの定着もあって、かなり厳しい経営とならざるを得ない。利用客の減少→減便→利便性の低下→さらなる利用客の減少という悪循環に見舞われた結果、廃線に追い込まれるローカル線も多い。ただ、鉄道部門は赤字でも不動産観光事業などのサイドビジネスで黒字を出している中小鉄道事業者もある。

定義

日本の法律では、鉄道事業法施行規則第四条で、次のものが列挙されている。

第四条 法第四条第一項第六号の国土交通省令で定める鉄道の種類は、次のとおりとする。
一 普通鉄道 - ごく一般的な鉄道(2本の製の線路の上を走るもの。新幹線から地下鉄軽便鉄道人車軌道まで)
二 懸垂式鉄道 - 懸垂式モノレールスカイレール
三 跨座式鉄道 - 跨座式モノレール
四 案内軌条式鉄道 - 新交通システム (AGT)・ガイドウェイバス (GBS)
五 無軌条電車 - トロリーバス
六 鋼索鉄道 - ケーブルカー
七 浮上式鉄道 - 磁気浮上式鉄道リニアモーターカー(ただし浮上せず、一に該当するリニアモーターカーもある。→リニア地下鉄など)
八 前各号に掲げる鉄道以外の鉄道

上記(八)に当たるものとしては、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)のIMTS愛・地球博線)が「磁気誘導式鉄道」として追加された。

上記以外ではローラーコースターロープウェイが鉄道にやや近い形態だが、鉄道には含まれていない。ただし、ロープウェイやリフトは鉄道と同じ法律(鉄道事業法)で「索道事業」として規定されている。

現在の概況

※歴史的な流れは後述

鉄道網の構成

1872年(明治5年)に開業した日本最初の鉄道は、国による建設であり、日本の鉄道は国有国営を旨としたが、その後勃発した西南戦争による政府財政の窮乏により、幹線鉄道網の一部は日本鉄道などの私鉄により建設された。しかし、日清日露の両戦争を経て、軍事輸送の観点などから鉄道国有論が高まり、1906年(明治39年)に鉄道国有法が制定され、日本の鉄道網は基本的に国が運営することとなった(一部の私鉄は民営のまま残ったが、一地方の輸送を担うのみとなった)。その後も、鉄道敷設法に基づいて、私鉄の買収国有化が行われた。

このように、鉄道国有法以降、第二次世界大戦直後までは、国(鉄道寮→鉄道院→鉄道省→運輸省)が全国の主要路線(国有鉄道)を直接運営していたが、1949年(昭和24年)の公共企業体日本国有鉄道)への改組を経て、1987年(昭和62年)には国鉄分割民営化により国鉄そのものが解体され、JRグループ7社に承継されている。

JRグループのほか、地域によっては私鉄も存在する。大都市圏にある大手私鉄準大手私鉄は主に都心と郊外を結ぶ路線網を構築している。中小私鉄は主にJRの駅から離れた都市とJR駅を結ぶ役割のものが多い。大都市では地下鉄もある。日本では地下鉄はいずれも特殊会社または地方公営企業公営交通)の形態をとっている。大都市圏には拠点駅と空港や郊外の住宅地を結ぶモノレール新交通システムも存在する。地方部には、主に旧国鉄の赤字ローカル線を継承した、地元自治体等の出資による第三セクター鉄道が存在する。主に山岳部の観光地にはケーブルカーも存在する。

法規上路面電車軌道法に準拠し、厳密には「鉄道」ではないものがほとんどである。戦後の高度成長期モータリゼーションの進行の結果、路面電車は撤去が進んだが、現在でも一部の都市で運行されている。地方公営企業(公営交通)形態のものと民間企業(私鉄)形態のものが混在する。1990年代以降、バリアフリー省エネや、高齢化社会対策としてコンパクトシティ化を図ろうという動きが本格化している。その政策の核として、路面電車の有効性が見直されている。既存路線に超低床車両が導入されたり、JRの在来線が路面電車に再編されたり(富山ライトレール)、さらには路面電車を新設する計画も本格化している(宇都宮ライトレールなど)。

JRグループ

1987年に日本国有鉄道(国鉄)の分割・民営化にともない、JRグループとして北海道旅客鉄道(JR北海道)、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)、四国旅客鉄道(JR四国)、九州旅客鉄道(JR九州)、日本貨物鉄道(JR貨物)の7社が発足した。これら7社のうち、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社については、後に国が保有していた株式をすべて市場に売却し、完全民営化を達成した。これに対し、JR北海道、JR四国、JR貨物の3社に関しては、JR会社法の適用を受け、政府が100%出資する株式会社形態の特殊会社となっており、株式の上場は行われていない。

大手私鉄

大手私鉄各社は、大都市部を中心として多くの輸送量を有し、どの会社も利益を上げている。しかし、日本全体の人口減や分割民営化されたJRの攻勢による競争激化などの影響を受け、輸送人員は減少傾向である。鉄道事業だけではなく、不動産事業などの関連事業で利益を出している会社も多い。

一般に、以下の15の鉄道会社が、大手私鉄と呼ばれる。東京圏は最初の8社、大阪圏は2つの都市圏を結ぶ近鉄を含めて5社、名古屋は名鉄、福岡圏は西鉄のみである。

  • 東武鉄道
  • 西武鉄道
  • 京浜急行電鉄
  • 東急電鉄
  • 京成電鉄
  • 小田急電鉄
  • 相模鉄道
  • 京王電鉄
  • 名古屋鉄道
  • 近畿日本鉄道
  • 南海電気鉄道
  • 京阪電気鉄道
  • 阪急電鉄
  • 阪神電気鉄道
  • 大都市近郊の準大手私鉄は、沿線開発や駅周辺の商業施設の運営に関わり、経営基盤は比較的安定している。しかし、それ以外の地方私鉄は、人口減、過疎化、モータリゼーションの定着などの影響を強く受けており、江ノ島電鉄富士急行など沿線に観光資源を有し観光事業が好調な事業者をのぞくと黒字になっている所は少ない。都市間輸送や観光輸送、政令指定都市中核市クラスの都市での通勤通学輸送など一定の需要が存在する路線以外は、路線縮小や廃止も相次いでいる。既存路線の高速化や新規車輌の導入など改善策の実施が、財政難から不可能な会社もある。昨今の地方公共団体の財政状態の悪化により補助金が減少あるいは停止されること、鉄道事業法の改正により届出だけで廃止が可能になったことが、地方の私鉄を取り巻く環境をさらに厳しいものとしている。

    一般に、以下の5の鉄道会社が、準大手私鉄と呼ばれる。

    • 新京成電鉄
    • 泉北高速鉄道
    • 北大阪急行電鉄
    • 神戸高速鉄道
    • 地方公共団体(公営交通)や、民間企業と地方公共団体の共同出資による第三セクターによる鉄道は、都市部の地下鉄や、交通網が脆弱な地域の交通需要を担っている。しかし、地方においては、旧国鉄の赤字路線をそのまま引き継ぐなど、経営状態はどこも苦しいのが実情である。都市部においてはまとまった需要があるため、路線により様々な状況がある。建設費の高騰から運賃が高価になり、そのため輸送量が伸び悩み、沿線の開発も進まないという悪循環に陥っている路線が多い。その一方でつくばエクスプレスのように好調な輸送実績をあげ、沿線開発が盛んに行われている鉄道路線もある。公営という性質上、保守的な経営形態をとるものが多い一方で、路線を新設し、LRTを導入した富山ライトレールのように新しい戦略をとる会社もある。

      貨物輸送

      国鉄分割民営化に伴い、貨物輸送は日本貨物鉄道(JR貨物)に委ねられた。かつて鉄道貨物は日本の貨物輸送の基軸を担っていたものの、昭和40年代以降、高速道路網の伸長、宅配サービスの充実、スト権ストによる国鉄貨物への信頼失墜などの影響で貨物輸送量は激減した、昭和50年代の国鉄末期には、経営合理化のために、貨物列車や設備は大幅に整理された上で、JR貨物に引き継がれた。

      JR貨物発足後も、鉄道貨物輸送量は低水準にとどまっているが、環境保護という観点や、鉄道輸送のメリットの再見直し、貨車車扱貨物)からコンテナ化、新車導入による速達化などの営業努力により、JR貨物の経営は黒字に転じている。

      しかし、地方の貨物輸送を中心とする中小私鉄(臨海鉄道等)については、経営の厳しいところも多い。

      輸送量

      昭和30年代までは全体的に増加傾向にあったが、昭和40年代以降は、まず高度経済成長期の産業構造の変化にともなう人口分布の変化(大都市への集中)と、自家用車の普及により地方中小私鉄の輸送量減少が進み、多くの中小私鉄が廃線となった。昭和40年代後半(1970年代)以降は航空運賃の低廉化、道路特定財源制度等を利用して高速道路建設等の道路整備、オイルショック後の石油の低価格化による自動車・航空機の増加で、鉄道による長距離輸送の需要減が進んだ。

      現在では少子化高齢化と人口分布の都心回帰が進み、地方中小私鉄だけでなく、大都市圏の私鉄でも、都心と郊外を結ぶ路線については輸送人員が増加から減少に転じる路線も出てきている。

      一方、都市部においては輸送量が年々増加している路線もあるし、路線の開業による輸送量の増加もみられる。地方においても自動車や航空機に対抗した種々の改善策、観光客の増加などにより、一部路線においては輸送量が増えているところもある。

      速度

      特別に高速運転ができるように設計・建設された新幹線では、山陽新幹線のぞみ」の西明石以西では最高速度300km/h、東北新幹線はやぶさ」の宇都宮 - 盛岡間において、最高速度320km/hの高速運転がなされている。

      一方、在来線の最高速度はごく一部に160km/h走行が可能な路線がある程度で、重要幹線でもおおむね120 - 130km/hにとどまっている。主な理由は

      • 多くの路線が狭軌であり、台車が小さくなるので高出力のモーターを搭載するのが難しかった。
      • 山地が多いが、長大トンネルを建設するのが難しかったため1930年代以前に建設された路線はカーブが多い(蒸気機関車の走行にはカーブを増やしてでも勾配をできるだけ避けた方が有利であった。また、長大トンネルは建設費等のほかに蒸気機関車からの煤煙の問題があった)。
      • 人口が密集しているために踏切が多く、そのため非常ブレーキをかけてから600m以内で停止しなければならないという規制があった(600m条項)。

      などが挙げられる。

      安全対策

      鉄道は交通機関の中では事故率が最も低く、安全に対する信頼感は高いものの、福知山線脱線事故などの重大事故は、鉄道の安全性への問題点が注目される契機となっている。鉄道各社とも、継続的に安全対策への投資を実施している。自動列車制御装置 (ATC) 、自動列車停止装置(ATS) などの基幹的な安全対策に加えて、ホームドア等の新たな安全対策も普及してきている。

      バリアフリー

      交通バリアフリー法の施行に伴い、各事業者とも、バリアフリー化に力を入れている。主にエスカレーターエレベーター設備の拡充が、都市部を中心に行なわれている。駅のトイレも多目的トイレの増設などが行なわれている。列車内トイレを多目的化したものもある。しかし、経営状態のよくない事業者ではバリアフリー化が進展していないところも多い。 路面電車においては低床車両であるLRVが盛んに導入されている。

      サービス向上

      利用者の増加を図るためにはサービス向上が必要であり、このために各事業者とも種々の施策を講じている。社員教育などの人的な点から、複数路線をまたがって利用したときの精算の手間を省く共通カード導入、さらにキャッシュレス化などが行なわれている。

      また、駅構内に店舗を勧誘・設置する(いわゆる「駅ナカ」)ことにより、利用者の利便性を向上し、同時に鉄道事業者の収益を確保する手法も広く用いられている。JRは、民営化によって旧国鉄時代に比べて自由に事業が実施できるようになったため、大都市部の主要駅を中心に、多くのテナントが駅舎内に展開するようになった。しかし、駅構内という圧倒的に有利な立地に商店を開業することで、駅周辺の商店への影響が出ている場合もある。

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