血液型(けつえきがた)は、血球の表面または内部にある血液型物質(抗原)の有無によってつける個人の区別であり、「ヒトの血清学的体質」、「血液の個人性」、「個人を血清学的に識別する方法」ともいえる。血液型は初め血液の型として出発してきたが、その後の研究によって血液以外(他の体液や細胞、毛髪のように生きていない組織も)にも分布する特徴であることが分かっており、内容的にその意義が著しく広くなっているため、慣習的に今でも「血液型」と呼んでいるが、厳密には今日の観点では不適当になってきている[1]。ヒトの血液型として国際輸血学会が認定している型は37種類ある[2]

上記のように抗体と抗原による反応をみるため、血液の成分が違っても判定は可能で、異種動物はもちろん、血液のない細菌にも血液型は存在する[3]

なお血液型と性格との関連性には科学的根拠がない[4]

主な分類方法

抗原は数百種類が知られており、その組み合せによって決まる血液型は膨大な数(数兆通り以上という説もあり)になる。世界を捜しても、一卵性双生児でもない限り自分と完全に同じ血液型をしている人はいないとすら言われる。この性質を利用して畜産、特にサラブレッド生産の分野において血液型が親子関係の証明に使われていた(現在は直接DNAを鑑定する手法が用いられる)。

輸血をする場合、ABO式血液型など一部の分類は自然抗体が形成され、型違いの血液を混ぜると凝集や溶血が起きるため、型合わせする必要がある。また、血液型によって、凝集や溶血反応はそれぞれである。

また、70万人に1人程度といわれている低確率[5]で一人の人間が複数の血液型を持っている場合は、「血液型キメラ」と呼ばれる(例:A型99% AB型0.1%等)。詳しくはキメラの項を参照。

赤血球の抗原を元に発見された型

ABO式血液型

本項ではボンベイ型に関わるため便宜上Hh式血液型にも触れる。

赤血球による血液型の分類法の一種。1900年から1910年ごろにかけて発見された分類法で、最初の血液型分類である。

  • A型は赤血球表面にA抗原を発現する遺伝子(=A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にB抗原に対する抗体が形成される。
  • B型は赤血球表面にB抗原を発現する遺伝子(=B型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にA抗原に対する抗体が形成される。
  • O型はどちらの遺伝子も持っておらず、赤血球表面にA/B抗原はない。血漿中にA抗原、B抗原それぞれに対する抗体が形成される。
  • AB型は赤血球表面に両方の抗原(A抗原およびB抗原)を発現する遺伝子を持っており、血漿中の抗体形成はない[6]

Hh式血液型は1932年に発見され、ABO式血液型の元になるH物質(=フコース)が抗原。これがない場合(h型)はボンベイ型になり、A型やB型の遺伝子を持っていてもA抗原やB抗原が赤血球に結合できなくなる。

Rh式血液型

赤血球膜の抗原による分類法。1940年ごろから明らかにされた。現在は40種以上の抗原が発見されている。そのうち主要なものはC対c・D対d・E対eの3対6種類の因子[脚注 1][7]で、その中でも特に強い反応をするD抗原の有無についての情報を陽性・陰性として表示することが最も多い。すなわち、Rh+(D抗原陽性)とRh−(D抗原陰性)である。なお、抗原Dは「抗原Dがあれば大文字D、なければ小文字dの表現型。」になるため、Dとd双方の遺伝子を持つ場合は普通にD抗原が作られるので完全に優性遺伝をする(遺伝子がDDでもDdでもD型、ddのみd型)が、CやEの場合は「C (E) という種類の抗原がある」と大文字、「c (e) という抗原がある」と小文字の表現型になるので両方の遺伝子を持つと不完全優性遺伝をして、遺伝子型がCCとCcとcc、EEとEeとeeでそれぞれ表現型が異なるためCcやEeという表現型になる、このため基本6因子だけでも18通りの血液型がある[8]

Rh−型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血などのショックを起こす可能性がある。Rh−型の女性がRh+型の胎児を妊娠することが2回以上になると病気・流産の原因となることがある。日本人の99.5%はRh+である[9]

MNSs式血液型

MN式は1927年ランドシュタイナーとレヴィンによってウサギを免疫して得られた血清より抗体が発見され、抗M、抗Nとの反応で表現型はM・MN・Nの3通りに分けられ[脚注 2][10]、この血液型は遺伝するが、ABOの遺伝子と異なりM遺伝子とN遺伝子に優劣はなく、両方ある場合はMN型となる。一方Ss型は1947年にワルシュとモントゴメリーらによって大文字S抗体、1951年にレヴィンにより小文字s抗体が新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見された、表現型はS・Ss・sの3通りに分けられる[脚注 3]。白人190人で調べたところS因子はM因子に明確な相関性があり、S陽性の比率がM型は73.4%なのに対し、MN型は54.1%、N型は32.3%となる[11]

後に本来は別々の血液型だが遺伝子の位置が染色体上で近く、見かけ上一緒に遺伝することが分かったため、現在は一緒に扱うようになっている[12]

ABO式と異なりMN式の抗体は体温で反応しにくいため輸血時に問題を起こしにくいが、まれに抗M抗体が不適合妊娠・輸血時に問題を起こす場合があることと、一緒に持っているSs式抗体は元々新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見されたことからも分かるように、自然抗体ではないが問題を起こす[12]

P式血液型

(便宜上関係のあるGloboside式血液型についてもここで触れる、また古い資料によっては「Q式血液型」の名前で詳しく乗っているものもあるのでそれも説明する。)

1927年にランドシュタイナーらによってウマの血清より抗体が発見された型で、表現型はP1、P2、P1K、P2K、pとあり、P1型=P1抗原とP抗原、P2型=P抗原、P1K型=P1抗原とPK抗原、P2K型=PK抗原、p型=抗原なしという組み合わせだが、P1KとP2K(いずれも稀血)は本来はGloboside式血液型による型で、こちらの遺伝子を持っていないとP抗原が完成されずに不完全なPK抗原ができてしまうため、P抗原を異物として自然抗体を持つようになる[13]。このため本来のP式は大半の人にあてはまる抗P1抗体に反応する(P1型、日本人の35%)かしない(P2型、同65%)であり、このため表現型をP(+) (= P1)、P(−) (= P2) と書く場合もある。

Q式はUM型とも呼ばれ[14]1935年に日本の今村昌一がブタの血清から抗体を発見し、ブタ血清の抗体に反応するこの抗原を「Q」と名付け、Q抗原を有する血球を大文字のQ型、持たぬ血球を小文字のq型とした[15]

今村や古畑自身も文献を調べた際にこのQ式がランドシュタイナーらのP式に似ていることには気が付いており、念のためランドシュタイナーからP式の凝集素(Pn)をもらって比較した所、被験者38名中両方の凝集素が凝集する(もしくは両方凝集しない)人が6割強ほどであったものの、片方だけ反応する例外が合計して3割弱(11人)あった[脚注 4]ため、お互い別物と考えたという。その後ドイツのダールも1940年にP式とQ式は似ているが別の血液型という意見を支持していた[16]が、その後PとQの抗体抗原は同じものであるという考えが主流となり[脚注 5]、現在は先に発見されたP式にまとめられている(P1=Q、P2=qになる)。

遺伝的にはP1 (Q) が優性遺伝する(P1P2遺伝子の表記型はP(+)になる=Qq遺伝子型はQ型になる)ため、P1 (Q) 型が片方でも親にいる場合は両方の型が生まれる可能性があるが、P2 (q) 型同士の子供は基本的にP2 (q) 型になる[17]

P2型の抗P1抗体は体温では反応しにくい(摂氏30度以上では反応が減じ、37度ではほとんど作用しない[16]。)ため通常は輸血時に問題は生じないが、遅延型輸血副作用を招いた例があるほか、他の型 (p, P1K, P2K) は多数派のP1型やP2型の輸血で不適合問題を起こす[12]

ルセラン (Lutheran) 式血液型

キャレンダーとレースによって1946年瀰漫性紅斑性狼瘡の患者の血液から抗体を発見される。

この患者は何度も輸血を受けていたが既存血液型と無関係の反応であったため抗ルセラン抗体と呼ばれるようになり、抗体に反応する物をLua、反応しないものをLubとしたが、1956年カットブッシュなどによってにLub内でも別の抗体(後の抗Lub抗体)に反応する人がいたため、抗原が2種類あることが判明する。このため当初はLuaがLubに対し優性遺伝する(=Lub型はLu抗原がない型で1つでもあればLua型になる)と考えられていた[18]が、その後の調べでABO式のA型とB型のように複数の抗原があるため、表現型はLu(a+b−)、Lu(a+b+)、Lu(a−b+)、Lu(a−b−)と4通りに分けられるようになった。

日本人ではほぼ100%がLu(a−b+)でごく少数(1%以下)がLu(a−b−)だが、Lua遺伝子は未発見[14]

ケル (Kell) 式血液型

(便宜上関係のあるKx式血液型とGerbich式血液型についても触れる)

クームスらによって1946年にケラッヘルという一児を産んだ女性の血液中に抗体(抗ケル抗体)を発見される。

抗ケル抗体で凝集される血球をK+もしくは大文字K、凝集されない血球をK−もしくは小文字kとして表し、Kはkに対し優性遺伝するため表現型のK+はKKとKkが存在するが、K−はkkのみとなる。

日本人ではK遺伝子は未発見でほぼ全員がK−である[14]

Kx式は1975年に発見されたX染色体上に遺伝子があり(ケル式は7番染色体)、ケル抗原の元になるKx物質(赤血球と白血球上にある)を抗原とする血液型で、Kx抗原の欠落を起こしたMcleod型ではケル関係抗原の減少に加え[13]、赤血球や白血球の機能不全や低下が起きる[19]

Gerbich式は1960年に発見された型で、大半の人の抗原はGE2・GE3・GE4だが、GE2とGE3がない人(GE4はあってもなくてもよい)はK抗原の発生が抑制され50%ほどになる。日本人では稀血だが、GE2とGE3がなくGE4はある(−2,−3,4)型はマラリア耐性を持つのでパプアニューギニアでは50%もいる[13]

ルイス (Lewis) 式血液型

1946年、イギリスのムーラントによって溶血性疾患にかかった新生児を産んだ母親2名から抗体が発見され[脚注 6]、2年後の1948年に、ムーラントとは別にデンマークの血液学者アンドレセンは新しい抗体2種類を発見し、後にムーラントの報告と同じ物と分かったのでアンドレセンは2種類の抗体・抗原をLea・Lebと命名した。ルイス抗原の大きな特徴として出生時に完成されておらず(このため新生児溶血疾患は招かない)、成長するに従い型が変化することがあり、新生児はほぼ全員Le(a−b−)だが、9割ほどは成長するに従いLe(a+b−)やLe(a−b+)に変化し6歳くらいまでに完成される、これの移行期である生後1年未満の幼児にはLe(a+b+)が見られる場合もあるが、成人には極めてまれ[14]で白人では成人を238人調べてLe(a+b+)が0人だった例がある[20]

これ以外にもルイス式はABO抗原同様に血液以外の体液にも検出される場合(分泌型)とされない場合(非分泌型)に分かれる特徴を持ち、Le(a+b−)は非分泌・Le(a−b+)は分泌型になる(Le(a−b−)は両方のパターンがある)他、Le(a−b−)の人のみ癌の診断に使われる消化器系腫瘍マーカーのCA19-9を作る遺伝子が欠落する副作用があるので、癌があってもマーカーが検出されないという変わった特徴を持つ血液型である。Lea・Leb抗体ともに自然抗体だが体温では反応しないものが多いため通常は輸血時に問題を生じないが、たまに体温で反応する抗体を持つケースがあり、こちらは不適合だと輸血副作用の原因となる[12]

ダフィー (Duffy) 式血液型

1950年、カットブッシュらによって血友病で輸血を20年以上受けていた患者の体内から抗体が発見され、これに対応する抗体を「ダフィ抗原(後のFy(a))」と呼んだ。翌年、輸血を受けたことのない女性の血清にこれと対蹠的反応をする抗体が見つかり、こちらをFy(b)とした[21]。Fy(a)とFy(b)の2つの抗原の有無によって、Fy(a+b+), Fy(a+b−), Fy(a−b+), Fy(a−b−)の4つの血液型に分けられる。

人種によって出現頻度が大きく異なり、白人では59名中、Fy(a+b+)が28人、Fy(a+b−)が11人、Fy(a−b+)が20人でFy(a−b−)は0人であった[22]が、日本人では Fy(a+b+)が19%、Fy(a+b−)が80%、Fy(a−b+)が1%、Fy(a−b−)が0%であった[14]

これについてFy(a−b−)型に関しては、アフリカサブサハラの三日熱マラリア流行地に遺伝的起源を持つ人に非常に多いのに対して、それ以外の地域に起源を持つ人にはほとんど存在しないことと、Fy(a−b−)型は三日熱マラリアに抵抗性を示す[脚注 7]ことで生存に有利だったためと考えられる[脚注 8]

キッド (Kidd) 式血液型

1951年レヴィン、ダイアモンド、ニージェラによって新生児赤芽球症の子供を産んだキッドという女性の血清中からこれまでの血液型と違う新抗体を発見し、彼女の子供の名前から因子をJkaと命名され、彼女の抗体を抗Jka抗体とした。1953年には別の抗Jkb抗体も発見され、表現型はJk(a+b−), Jk(a+b+), Jk(a−b+), Jk(a−b−)となるが、Jk(a−b−)はモンゴロイド系の人以外では確認されていないうえ、モンゴロイド内でも少数派で日本人でもJk(a+b−)が27.2%、Jk(a+b+)が50.4%、Jk(a−b+)が22.4%、Jk(a−b−)が稀となっている[13][12]

ディエゴ (Diego) 式血液型

レヴィンらによって1954年に発見。表現型は大半の人はDi(a+b−), Di(a+b+), Di(a−b+)でこれ以外に少数派のWra、Wrbなどの抗原がある。

Dia抗原を持つ人はモンゴロイド系の人以外では確認されていない[14]が、モンゴロイド内でも少数派で日本ではDi(a+b−)が0.2%、Di(a+b+)が9.0%、Di(a−b+)が90.8%である[13][12]

その他の赤血球抗原による血液型

(本節で特筆ない場合の出典は、松尾友香『最新 血液型の基本と仕組み』の血液型一覧[13]より)

Yt/Cartwight式血液型
1956年発見。対立抗原YtaやYtbが存在。
表現型はYt(a+b−), Yt(a+b+), Yt(a−b+)。
Xg式血液型
1962年発見。因子はXga抗原とCD99だが、後者もXga抗原と関係するタンパク質のため、血液型はXga遺伝子の有無のみで決まる(Xg(a+)かXg(a−))になる。
X染色体上に遺伝子があるため、遺伝子型は女性が「XgaXga、XgaXg、XgXg」、男性が「Xga(Y染色体)、Xg(Y染色体)」になり、「XgaXga、XgaXg、Xga(Y染色体)」がXg(a+)型、「XgXg、Xg(Y染色体)」がXg(a−)になる。
このためXg(a+)型は女性に多く、日本人の場合「Xg(a+)型:男69.4%、女88.8%」、「Xg(a−):男30.6%・女11.2%」となる。
自然抗体と思われるものが多いが、輸血や新生児溶血症の原因になりにくい。
Scianna式血液型
1962年発見。大半の人は対立抗原Sc1かSc2を持つ、これ以外に大半の人にある(高頻度抗原)Sc3と逆に少数派(低頻度抗原)のSc4がある。
Sc2抗原を持つ人は日本人の0.1%程度だが、抗Sc1と抗Sc2は免疫抗体。
Dombrock式血液型
1965年発見。対立抗原DoaとDobがあり、これらの抗体は免疫抗体だが溶血性副作用あり。
日本ではDo(a+b−)1.5%、Do(a+b+)22%、Do(a−b+)76.5%、Do(a−b−)ごく稀。
Colton式血液型
1967年発見。抗原は大半の人は対立抗原CoaとCob。溶血性輸血副作用や新生児溶血の原因となる。
日本ではCo(a+b+)0.6%、Co(a+b−)99.4%、Co(a−b+)稀、Co(a−b−)稀、Co(a−b−)は水透過性が80%減少するが2009年現在健康問題は報告されていない。
LW (Landsteiner-Wiener) 式血液型
1961年に発見、大半の人は対立抗原LwaやLwbが存在。抗体は免疫抗体。
表現型はLw(a+b−), LW(a+b+), Lw(a−b+), Lw(a−b−)、D抗原と類似した反応を示すが特異性が異なり関係ない。
人種を問わずLwa抗原が多くてLwbが少なく、日本人の場合LW(a+b−)がほぼ100%。
2006年時点で、抗Lwa抗体による輸血副作用や新生児溶血疾患の報告はない[12]3。
Chido/Rodgers式血液型
1967年発見。別系統の2種類の抗原の組み合わせのため抗原の種類がかなり多く「Chの1~6」、「WH」、「Rg1、Rg2」の9種類。抗体は免疫抗体
日本人はChの分類だと「Ch1,2,3型が75%、Ch1,−2,3型が27%、Ch1,2,−3型が0%、Ch−1,−2,−3型が1%。」、Rgの分類では「Rg,1,2が99.7%、Rg,1,−2が0%、Rg,−1,2が0.3%」
Cromer式血液型
1965年発見。対立抗原「Tca、Tcb、Tcc」と「WESa、WESb」の5種類があるが、輸血における稀血はこれではなく大半の人が持つ抗原(高頻度抗原)がないケース(参照)。
Knop式血液型
1970年発見。対立抗原「Kna、Knb」「McCa、McCb」「SlaとVii」
Slaがない型はマラリア抵抗性があるため西アフリカの黒人では70%がSl(a−)。
Indian式血液型
1973年発見、対立抗原InaとInbがあるが、名前の通りインドで研究が進んだ型で他の地域ではほとんど調査されていない。インド人の大半 (97.08%) はIn(a−b+)
Ok式血液型
1979年発見。抗原はOkaのみでこれがないOk(a−)は稀血。ただし2009年時点で新生児溶血の報告なし。
RAPH式血液型
1987年発見。抗原はMER2 (CD151) のみで、この抗体の本来の役目が腎臓の糸球体の構築や分化に関わるタンパク質のため、これを持たないMER2は幼児期に腎不全を起こす。
JMH式血液型
1978年発見。抗原はCDw108のみで、JMH−型は稀血だが後天的に60歳以上の高齢者がこれに変わる場合がある。
また抗JMH抗体を持つ人にJMH+の血液を輸血したが問題が起きなかった例もある。
Ii式血液型
1956年発見、抗原はIのみ(小文字i抗原が合成されて大文字I抗原になる)。i型は先天性白内障を伴うことがある。
GIL式血液型
1981年発見。抗原はAQP3のみ。

白血球の抗原を元に発見された型

ヒト白血球型抗原

白血球の抗原の分類によるもの。現在では血液に限らず、組織の適合性に関わる情報として用いられるようになっているものである。ヒトの遺伝子上で白血球の抗原に関わる部位は、主要なものだけでもA,B,C,DP,DQ,DRの6箇所があり、それらの部位のタイプの組み合わせは数万通り以上あると言われており、結果として、特に血縁関係でもない限り人間同士でHLA型が完全に一致することは極めて稀である(主要組織適合遺伝子複合体も参照のこと)。

高頻度抗原を欠く稀な血液型

頻度が1%以下の低頻度抗原の血液型は適合血の確保が困難となるため、日本赤十字社において登録を呼びかけている。

日本で登録が必要とされる日本人における稀な血液型の例[23]

ABO式
ボンベイ (Bombay) 型、Ohとも表現される型で赤血球と唾液にA・B・H抗原を欠き、血清中に抗A・抗B・抗Hすべての抗体を保有。便宜上O型の亜種とされるがこの抗H抗体のため[脚注 9]A・BはもちろんO型赤血球も輸血すると凝集させてしまうので、元々日本人には少ない型に加え、輸血には原則同型の物しか使えない。パラボンベイ (para-Bombay) 型という類似型[脚注 10]にも同じことが言える。
Rh式
-D-型(バーディーバー:Rh:欠失型)。Rh抗原のうち「D抗原はあるが、Cもしくはc抗原とEもしくはe抗原が存在しない」という型。定義上はRh+だが通常のRh+の血を輸血されるとC (c) やE (e) 抗原に自己の抗体が反応してしまう。同型同士とRh nullからの輸血は問題ない[24]
cD-型
Rh null型(―――:バーバーバー)。Rh抗原がすべて存在しない型、Rh抗原のある血液(Rh−や-D-なども含む)を輸血すると凝集するのはもちろんだが、これ以外に軽度の貧血や赤血球の変形や赤血球の寿命が短くなる問題を起こす場合があり、Rh null症候群という[24]
Rh mod型。Rh null型に似ているが、極めて弱いRh抗原がある[24]
これらは抗原を保有しているが少なかったり、一部が欠損しているもので、輸血の際受血者のときはRh0(D)(−)、供血者としてはRh0(D)(+)として扱う:(これ以外に「1%以下で登録が必要」ではないが、Rh式のプラスマイナス判定で重要なD抗原が少ない「weakD (Du)」やD抗原のタンパク質が一部しかない「partialD」などの変則な型があり、これらも受血者のときはRh0(D)(−)、供血者としてはRh0(D)(+)として扱う。)[25]
MNSs式
S+s-
S-s-U-
En(a-)
MkMk
Nsat/Nsat
MiV/MiV
P式
p型。
Pk型。
両方ともP抗原を持たないのでP抗体を自然抗体として持つため、多数派のP1、P2型の血液を輸血できない。(p型はPk型からの輸血もできない)
P抗原のない副作用として、これらの血液型はP抗原を足場に感染する伝染性紅斑(リンゴ病)のヒトパルボウイルスB19が感染しない[13]
ルセラン (Lutheran) 式
Lu(a−b−)、基本的な型だが分布が偏っており、日本ではLu(a−b+)が100%近くなので稀型となる。
ケル (Kell) 式
この型は日本人の100%近くがK−のため、必然的にそれ以外は稀血となる。
Ko型。ケル抗原が全種存在しない。
K+k−型
Kp(a−b−)型
Mcleod型。厳密にはKx式血液型のKx抗原を欠く型、ケル関連抗原の減少を伴うので便宜上ここに入れる[13]
ダフィー (Duffy) 式
Fy(a−b+)、基本的な型だが分布が偏っており、日本人でFy(a)抗原がない人は少数派。
Fy(a−b−)、基本的な型だが分布が偏っており、日本人でFy(a)抗原がない人は少数派。
キッド式
Jk(a−b−)、基本的な型だがモンゴロイド系以外では未確認。モンゴロイド内でも少数派。
ディエゴ (Diego) 式
Di(a+b−)、基本的な型だがモンゴロイド系以外では未確認。モンゴロイド内でも少数派。
その他の型の登録が必要とされる日本では稀な血液型
Landsteiner-Wiener式(LW式)、LW(a−b−)型。免疫抗体
Gerbich式、Ge−型。
Cromer式、IFC−、UMC−、Dr(a−)。いずれも高頻度抗原が稀に存在しない人の型
Ok式、Ok(−)。ただし2009年時点で新生児溶血の報告なし。
JMH式、JMH−。ただし2009年時点で抗JMH抗体を持つ人にJMH+の血液を輸血したが問題が起きなかった例もある。
Ii式、I−型、i型。
Dombrock式、Do(a+b−)、Gy(a−)。Do(a+b−)は基本の血液型だが日本では少なく1.5%程度、Gyaは高頻度抗原で大半の人は持っているがこれを持っていない人は稀血。
以下の抗原は血液型システムに属していない[13]
Lan式、Lan−型。免疫抗体
Jr式、Jr(a−)型。1500人に1人ほどの割合で見られる。免疫抗体でこの型に対しJr(a+)型の血液を輸血して問題のなかった例もある[13]
Er式、Er(a−)型。免疫抗体。

稀血と献血

献血などに訪れた人が特殊な血液型であることが判明した場合、赤十字社のコンピュータに情報が登録され、血液はマイナス80度以下の超低温で冷凍され長期保存(現在の基準では10年)される。特殊血液型の人が輸血などを必要とする状況になった場合には、この冷凍血液を解凍して使用するか、登録している同じ型の他の人への緊急献血協力を依頼(電話や速達便などで)、または日本国外の赤十字社へストック要請をすることになる(逆に、日本国外から要請があれば同様に冷凍パックを送る)。「Rhマイナス友の会」という登録グループが存在する。

適合性