高速バス(こうそくバス)とは、主に高速道路を通行する路線バスのことを指す。以下、特記ない限り、日本国内の高速バス(道路運送法に規定される「一般乗合旅客自動車運送事業」の形態として運行されるバス)について記述する。

概要

一般的には、距離が数十から数百キロの都市間輸送、ないしは都市と観光地を結ぶものの中で、高速道路を利用するものを指す。ただ、国土交通省等役所の各通達で使われていた「高速バス」という言葉も一定ではなく[1]、「高速バス」という語の法律的な定義はされていない。そのため旅行業者(「一般貸切旅客自動車運送事業」の形態として運行されるツアーバス)が自社商品を「高速バス」と呼称している事実もあった[2]。高速道路上(道路標識など)では単純に「路線バス」と記載されている。観光バスなどとの識別のため(高速道路の料金区分が大型バスの場合、路線バスは大型車、それ以外は特大車料金になるため)、バスのフロントガラスの運転席寄りに「路線バス」の標識を付けている(ただ、ETCの普及で、料金所での人手を介した通行券の受け取りや支払いがなくなったことから、「路線バス」の表示はない場合も見られる)。

空港へのアクセスを担う高速バスは事業者によってリムジンバスとも案内されるが、リムジンバスを高速バスの下位概念として見なされることがある[3]。高速道路は通過しないが中長距離の都市間連絡を担う特急・急行バスも場合によっては制度上は高速バスと同等に扱う場合もある[4]

なお、特急、急行バスは多くは一般道経由のバスとして高速バスと区別されるが、事業者によっては高速バス内の上位種別として特急、急行バスと称する場合や、路線名としてそのように称する場合もある。また、路線全長の内、高速道路走行区間が短い路線を準高速バスと称する場合もある。

東名ハイウェイバス名神ハイウェイバス中国ハイウェイバスの各停便は、種別が急行となる。ただし、名神ハイウェイバスの急行便は2006年(平成18年)現在名称上廃止している。

高速道路を通過する際には、法規によりバスの着席定員以上の乗客を乗せて運行することが禁じられているので、所要時間1~2時間程度までの短距離路線など一部を除き、事前に席を予約する座席指定制を採用することが多い。一部では、一般路線バスと同様に予約不要だが、定員以上は乗車できない定員制を採用している。また、ほぼすべての路線で全席禁煙となっている。

他の交通機関と比較して安価である場合が多く、鉄道と異なり道路を利用する関係上、天気などの気象状態のほか、大型連休・旧盆年末年始などの行楽シーズンや、集中工事期間、突発的な交通事故などの発生による渋滞・交通規制などにより、定時運行ができないことがある。以下の記載は、基本的に路線バスとしての高速バスに限定して記述する。

車両

観光バスタイプの車両に類似するが、路線バスとして運行するため行き先表示装置自動放送装置・降車ボタン・運賃表示器運賃箱等の一般路線バス車両と同様の機器を取り付けている。逆に必要のない出入口部のガイド席や客席のマイクなどは装備されていない。ただし、完全予約制の路線については自動放送装置・運賃表示器・運賃箱のない車両が利用される場合もある。室内のシートはほとんどがリクライニングシートで、昼行路線が3列(2+1)または4列、夜行路線が3列独立シートの場合が多い。なお2+1タイプの3列シートでは、出入り口側に通路がある車両と運転席側に通路がある車両が混在する。

また、観光バスとして用いていた車両に、運賃箱や放送装置などを取り付けて、高速バスに転用した車両も多い。観光バスからの転用の場合、ある程度の距離を走る路線でもトイレ無しの場合がある。西日本鉄道などでは、夜行車を昼行用に転用したことがある。逆に、JRバス関東では昼行用の車両を独立3列シートに改造の上、夜行用に転用したことがある。

黎明期の高速バスでは、通常に比べ出力(馬力)の大きい専用のエンジンを搭載したバスをメーカーに特別注文したものもあった(その代表例が国鉄専用型式)が、通常の観光バスと比べ価格が高く、また市販の観光バスの車両も出力が大きくなったために、必要性が薄れ、現在では製造されていない。

ただし、前述のように各メーカとも通常の観光バスをベースとして、行き先表示装置(サボで代用する場合もある)など路線バスとしての装備と、車内を最小限の簡素な仕様とした高速バス向けの車両を用意している。さらに、夜行高速車の場合、3列シート、交代乗務員の床下仮眠室など夜行バス向けの装備と、高出力エンジンと制動力に優れたフルエアブレーキを装備したインターシティ仕様を各メーカーが設定している。

またコストダウンとバリアフリー化のため、近距離高速バスについては高出力エンジン仕様のトップドア路線バスや、いわゆる「ワンロマ」をベースとした車両もあり、一部事業者(特に首都圏や九州地方)で集中的に導入されている。

一部事業者では、運行コスト削減のためマイクロバスを使用する事例もある(中国バスが運行していたフライングフィッシュ号オーシャンライナー南部バスの軽米高速線、神園交通のすーぱーばんぺいゆなど)。また、曜日限定ではあるもののジャンボタクシー車両を使用した路線も存在した(両備バスがかつて運行していた広島つやまエクスプレス)。

中長距離用の場合は車両中央部の床下または最後部に便所を設けてあるものが多いが、盆や正月などで増便する場合、観光バス車両など、トイレを設置していないバスが使用されることがある。その場合は高速道路のサービスエリアパーキングエリアでの休憩をこまめにとることがある[5]。また、高速バス自体は禁煙となっているので、休憩先の喫煙所は、高速バスが停まっている間は混雑する傾向にある。トイレはハイデッカー・スーパーハイデッカーでは中央部か最後部、ダブルデッカーでは1階の最後部に設置されている例が多く見られる。設置場所の制約からコンパクトにまとめられており、下の写真にあるように、用を足すための最小限の広さのものが多いが、広さを横幅いっぱいに拡大し、便器のほかに洗面台や鏡を備えたパウダールームを設置している例もある。

床下には大きな荷物を収納するためのトランク(荷物入れ)が設置されており、車外から車体側面下部にあるトランクリッドを開けて荷物を出し入れするようになっている。また夜行高速車では床下もしくは最後部、2階建て車の場合は階下席前扉脇にカプセルホテルに似た形状の乗務員仮眠室も設置されており、運転しない乗務員は横になって仮眠することができる。床下配置の場合は中央床下トイレの脇に仮眠室の出入口があり、また外部からもトランクルーム同様のドアがあり出入りが可能になっている。続行便等で仮眠室を装備していない車両を使用する場合は、運転席後部の座席を仮眠スペースとして使用するケースが多い。

かつては長距離路線を中心にAVサービス機器(ビデオやテレビ放送の放映、マルチチャンネルオーディオ、ラジオなど)が装備されていたが、近年は縮小・省略の傾向にある。座席に個別の液晶テレビを備えている例もある。また長距離路線を中心に給茶機冷蔵庫によるセルフサービスでの飲物の提供、あるいは自動販売機による飲物の販売、100円硬貨もしくはテレホンカード専用車内電話などの設備・サービスが実施されていたが、これらも縮小・省略の傾向にある(自動車公衆電話は、NTTドコモのPDC方式の携帯電話が、2012年3月31日を以て停波した際に、自動車公衆電話サービス自体も終了しているため、それに先だってあるいはそれに併せる形でサービスを終了し、自動車公衆電話端末を撤去している)。一方、近年では乗客がノートパソコンスマートフォンを利用して車内でインターネットに接続することを可能にするため、車両に公衆無線LANを導入したり、座席にモバイル機器充電用のコンセントUSBポート[6]を設置したりする事例も増えている。

同一の区間で設備と運賃に格差をつけた複数の便が運行されている例がある。また同じ車両であっても設備と価格に格差をつけている場合がある。

高速バスで使用される車両の寿命は、目安として走行距離が100万kmを超えた頃とされており、運行距離が長い路線の車両では10年を待たずに新車と入れ替えて廃車にされるサイクルにあった。しかし、2010年代に入ると観光バスの需給が逼迫し始めたことから、徹底した整備を施し高速路線で運用を続けたり、観光バスへ転用される車両もみられるようになっている。中古車市場では、極端な多走行車であっても取引が行われる事例がある[7]


沿革